第37話 港町ケイン防衛戦(15)

「はい。間違いないと思われます」

「俺は戦ったことが無いが強いのか?」

「四天王一人で、滅ぼされた国があります」

「ふむ……」


 国を一人の魔物が滅ぼすか……、どのくらいの力を持っているのか今一、理解できないな。

 もう少し明確な判断基準があれば、戦略を立てることも出来るんだが……。


「エミリアは、何か知っていることがあるか?」

「私も、魔王軍に関しては……、魔王軍が狙っているのは基本的に人間の国ですし、獣人に関しては、魔物が襲ってくる事くらいしか……」

「つまり、魔物は襲ってくるが魔王軍は不干渉ということか?」

「はい」


 俺の問いかけに頷くエミリア。

 そうなると、魔物を統率して攻めてくる魔物という事になる。

 アルドガルド・オンラインをしていた時は、そんな魔物と言えば魔物調教師くらいだったはずだが、そうでは無いとなると頭だけを潰して敗走させるのは厳しいな。


「とりあえず、冒険者ギルドの方は、情報を持っていないという事でいいのか?」

「はい。とりあえず、ここで議論をしていても仕方ありませんので、私は魔物がケインに向かってきている事実をギルド内に共有すると同時に、冒険者たちのグループ組織化と配置を同時に行います。そのあと迎撃準備を整えます」

「分かった。それとエミリアは回復魔法が使えるから――」

「え?」


 俺が言い切る前に、エミリアが驚いたかのような表情を見せ、俺の腕を掴んでくる。


「私も一緒に戦います」

「駄目だ」


 これはゲームではない。

 ゲームシステムは利用出来ているが、死ねば多分生き返ることは出来ない。

 それにヒールの回復魔法は覚えてはいるが範囲回復魔法は取得していない。

 コレが何を意味するのか? と、言えば大勢の人間が怪我をした場合、助けることができない奴が必ず出てくるという事だ。

 つまり、現状では狩りなどは出来るが本当の戦闘で死ぬ可能性がある人間を連れてはいけない事いうことだ。


「ソフィア。エミリアは救護班に入れてやってくれ」

「……良いんですか? 冒険者ギルドとしては助かりますけど」

「カズマさん!」

「エミリア。お前は、怪我人の治療に専念してくれ。敵が、どういう形で攻めてくるか分からない以上、不測の事態は必ず発生する。後方支援をキチンと管理し徹底する。それは、レイドバトルの基本だからな」

「――でも……私……」

「何度も言わせるな。回復魔法は貴重だ。ソフィア、回復魔法が使える人間は何人いる?」

 

 俺の言葉にソフィアは頭を振る。


「ここの教会には回復魔法が使える人はいなかったから、いまは回復魔法が使える人がいないわ」


 ソフィアの説明を聞きながら、俺はエミリアの方へ向く。


「そういうことだ。死人が出るのは、あとで問題が起きる。だから、お前は回復に専念してくれ」

「カズマさんは……」

「俺は何とかなる」

「それじゃ、ソフィア。自警団の組織がキチンとできたら合図してくれ。それまでは、俺が魔物を相手にする」


 俺は、エミリアを置いて北側の門へと向かう。

 敵が魔王軍なら、俺が立ち向かって勝てるかどうかは分からない。

 何故なら、俺の称号には『勇者』という称号はないのだから。

 



 

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