第36話 港町ケイン防衛戦(14)


「この魔法って……。カズマさん、攻撃魔法が使えたんですか?」

「ケインの冒険者から教えてもらった」

「これほどの魔法を――? ケインの冒険者の方が?」


 あっ――、しまった。

 俺が、カンダタさんに教わった魔法はLV1の魔法ウィンドカッターだけだった。

 それをポイントで無理矢理レベルを上げて上位魔法を覚えたに過ぎない。

 まぁ、俺が魔法を使えないということをエミリアは知っているわけだし、下手に言い訳するのもな。


「ああ、実は魔法を教えてもらったあとに、こういう魔法を閃いたんだ」

「そうですか。すごいです。これだけの攻撃魔法なんて使える人は、王宮の宮廷魔法師くらいなのに……」


 じーっと不審な目で俺を見上げてくるエミリア。


「それよりも、これだけのゴブリンが出たことを町に知らせないと不味い。早く戻るぞ」

「はい!」


 エミリアを急かせて、俺はエミリアと共にケインへ戻る。

 その時に、俺のスキル『イーグルアイLV10』には、地平線の彼方から無数の――、数万を超えるモンスターの大軍が近づいてくる光景が目に入っていた。


 港町ケインに戻り、門兵にモンスターの大軍が近づいていることを伝える。

 そして、何時も開け放たれている門を閉めると慌てて操作レバーを動かしていた。

 俺達は、その様子を最後まで見ることはせずに冒険者ギルドへ向かう。


「いま戻った!」

 

 バン! と、音を立てて冒険者ギルドの両開きの木製扉を開ける。


「――あ、カズマさん! 大変です!」

「どうした?」

 

 俺が感知している以外のことが起きたのか?


「実は北の草原で大きな竜巻が起きたんです! もしかしたら、魔物の仕業なのかも知れないと町では噂になってまして――」

「それは俺の魔法だから気にしなくていい」

「――へ?」

「だから、俺が起こした竜巻だ」

「……えっと……カズマさんって剣士で登録を掛けていますよね?」

「ああ。最近、魔法が使えるようになった」

「最近って……。冒険者の登録をかけたのは、たしか――」

「余計な詮索はしないでくれ。俺に魔法を教えた人間が優秀だっただけのことだ」

「……わかりました。今は、少しでも戦力が増えたこと――、それを喜ぶとします」

「分かってくれたならいい。――では本題だ。魔物の群れが北からケインに向かってきている」

「数は、どのくらいか分かりますか?」

「ざっと見て数万だな。どんな魔物がいるのかまでは確認してない。というか情報を持ってくる事を最優先にしたから、後回しにした」

「それって……、その数って、本当なんですか?」

「ああ、間違いないな」


 再度、確認してくるソフィアに、俺は頷き本当だと伝えると、彼女は顔を真っ青にする。


「もしかしたら……魔王四天王の一人が指揮しているのかも知れません。それだけの大軍を動かすなんて、普通の魔物には不可能です」

「魔王四天王か……」


 まったく、勇者組は何をしているんだ。

 そういえば魔王軍と勇者組にいた間は戦ったことなかったな。

 あいつら本当に勇者としての責務を果たしているのか?


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