第35話 港町ケイン防衛戦(13)

 何時も通り、狩りをしている草原へとたどり着く。

 台車を持ってきていないのは、持ち運びが台車だと時間が掛かるというよりも何かあった時に逃げ遅れる可能性が出てくるから。

 そのことをエミリアに伝えることは失念していたが、斥候という形で、横にいるエミリアは、ソフィアに説明していたのを聞いていたので、何も聞いてこなかったのかも知れない。


「カズマさん、どうしますか?」

「そうだな……」


 とりあえず、斥候という形で町の外に出てきたが平原を見る限り、問題は無さそうだが……。




 ――『気配感知LV10』と『鷹の目LV10』が融合します。




「――お」

「どうかしました?」

「いや、ちょっとな」


 どうやら周りを注意深く見ていた事、それにより所有していた二つのスキルの経験値が貯まったことでようやくスキル融合が解禁されたようだ。




 ――『イーグルアイLV1』を習得しました。



 

 すぐに習得したスキルをLV10まで引き上げる。




スキル


『片手剣LV10』

『投擲LV10』

『イーグルアイLV10』

『状態異常無効化LV10』

『スナイパーLV10』

『肉体防御LV10』


 

 

 さらに、スキルをチェック。




『イーグルアイLV10』

 ・俯瞰的に物事を見ることが出来る。

 ・第三者の目線――、飛んでいる鳥のように周囲の状況を観察する事ができるようになる。




 説明は、ゲーム内と一緒。

 これなら、ゲーム画面を見て敵の位置が容易に把握できるように、いまは出来るはずだ。




「イーグルアイ発動!」

「カズマさん!?」

「何でもない……」


 いけない、思わずゲームをしているノリで叫んでしまった。

 ただ、その甲斐があったとも言えるのか、俺の視界は、俺達を含めた視界へと切り替わり、30メートルほど上空から見下ろす形へと代わっていた。

 ――そして……。


「そこっ!」


 俺はアイテムボックスから、こぶし大の石を取り出し投擲。

 スキル『投擲LV10』と『スナイパーLV10』の補正を受けた石は風を切り裂き――、草原の茂みに隠れていたゴブリンの頭を粉砕した。


 粉砕した時に「グゲッ」と、言う声が聞こえると同時に――、


「カズマさん、敵が周囲に居るようです」

「ああ、どうやら、体が緑色なのを利用して接近してきていたみたいだな」

「どうしますか? 匂いからして100以上は――」

「決まっている!」


 魔法欄一覧を開く。


「エミリア、俺の後ろにいろ」

「分かりました。――でも、どうやって倒すのですか?」

「任せておけ」


 俺は、エミリアに答えながらも、高速で視界内のコンソール画面を開いていく。

 その速度は、ゲーム画面のコンソールを開くよりも遥かに早く、視界内のコンソロールが開く感じも滑らかだ。


「LV8の風魔法を使う」

「――え? 風魔法って――」


 疑問符が浮かぶエミリアの声を他所に俺は頭の中で台風が作られていくプロセス――、つまり科学的知識を含めた情景を思い浮かべる。


「サイクロン!」


 俺達を中心にして、最初は旋風のような風が吹き、それが数秒で暴風となる。

 それが一気に拡大していき――、草原の草を根こそぎ吹き飛ばすばかりかゴブリンすら切り刻んでいく。

 そして――、『風魔法LV8』のサイクロンが消滅したあとは、草原の草は軒並み倒れており、その上にはバラバラになった百以上ものゴブリンの死体が散乱していた。



 

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