第242話 エミリアの故郷(3)

「どのような仕事か教えてもらいたいものだな」


 俺は溜息をつきつつ、冒険者ギルドカードをアイテムボックスから取り出し、話しかけてきたウェアウルフに手渡す。


「――こ、これは……Sランク冒険者のギルドカードだと!?」

「言っておくが、Sランク冒険者になれば、守秘義務な仕事の一つや二つ、受ける事がある。よって、俺の独断では答えられないことだってある。そこを理解した上で聞きたいなら、冒険者ギルドの方へ直接聞いてくれ」

「くっ……。それでは、どうしても話したくないという事か?」

「別に話しても構わないから、その時、クライアントに不利益が生じたときに騎士団が責任を負うのなら、話してもいいぞ?」

「――っ。わ、分かった。まずは、詰め所まで来てもらおう。そのあと、騎士団の方から冒険者ギルドの方へ確認を取る」

「いいだろう」

「では付いてきてくれ」


 馬に乗り、移動を始める騎士団の後ろをリオンが引く俺達の幌馬車が追う形になる。

 幌馬車に戻った俺に――、


「カズマ、よかったのですか?」

「何がだ?」

「こちらの事情を説明しなくてもという点ですけど……」

「ああ。正直、イドルのちび地竜の件がなければ、正直に話してもよかったが、国境を奪う事態にまで発展しているからな。余計な情報を与えてゴタゴタになるのは正直言って控えておきたい。エミリアの肉親に会えば、そのへんは何とかできるはずだしな……できるよな?」

「問題ないと思います」

「それならいいんだがな……」

「何かあれば、妾が地竜の姿に顕現するのじゃ!」

「まぁ、そのへんは最終手段だな」


 会話をしている間に、俺達一行が乗る幌馬車はわーるランドの王都リベルタニアに到着する。

 そして門を抜けた近くの詰め所に、俺一人だけ案内された。


「それでは、リベルタニアの冒険者ギルドに確認をとってくる」

「ああ。あと、名前を聞いていなかったが?」

「ダリアだ。第三騎士団団長を襲名している」

「ダリアね……。ダルアに似た名前だな」

「何!? い、いま! なんと!」

「ダルアだと言ったんだ。名前が似ているなと思っただけだが……」

「私の兄を知っているのか?」

「ああ。砂漠の街エイラハブで一緒に戦った仲間だからな」

「なるほど……。――では、本当に兄を知っているのなら、その仕事も――」

「姫の捜索だろ?」

「――!? ……なるほど……。どうやら、兄を知っているというのは本当のようだな……」

「まあな……。あと、俺の情報を聞きたいのならリーン王国の王都リンガイアの冒険者ギルドマスター、ケイネスに確認してくれ」

「分かった。少し待っていてくれ」


 詰め所から出ていくダリアの後ろ姿を見送ったあと、俺は簡素な椅子に腰かける。

 そして、そんな俺を、詰め所の中にいる10人ほどの獣人の兵士が見てきていた。

 おそらく誰もが、エミリアのことを聞きたいのかも知れないな。





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