第81話 今日から、お前、馬な!(1)

 ハイネの町を出て、走ること数時間、馬の手綱を握っている俺は変な違和感を覚えていた。

 何と言うか馬が怯えているような……、そんな感じがする。


「マスターよ。どうかしたのか?」

「リオンか。馬の様子がおかしいんだが、近くに魔物の気配とかは無いよな?」


 一応、俺もスキル『イーグルアイLV10』で、ある程度の距離まで周囲の状況を確認する事が出来るが、今回は、何も見えてこない。

 逆にリオンは、アルドガルド・オンラインにおける最強も魔物でありモンスターの四竜の内の一匹である水竜アクアドラゴン。

 俺よりも探索範囲は、段違いで広い。

 

「ふむ……。馬が怯えているか」

「ああ。何かあると思ってな」


 一応、スキル『騎乗LV10』が感知しているので間違いはないと思うんだが……。


「それは、妾のせいであろうな」

「――ん? どういうことだ?」

「妾のような最高位の魔物が背中に居たら馬も安心して走ってはおられんだろう? つまりそういうことだ」

「お前のせいか! ――と、いうか、そんな問題を引き起こしておいて偉そうに語るな!」

「――だが、仕方ないであろう。妾は、最強の竜。存在自体が尊いのだからな」

「とりあえず、リリースしていいか?」

「馬をか?」

「お前を!」

「マスター。戯れもほどほどに」

「割とマジだが?」

「待ってくだされ! 創造主様に――、魔神様に捨てられたら、妾の存在意義は!」

「――なら、お前が馬車引けよ」

「……つまり、馬の代わりを妾にさせると?」

「そういうことだな」


 ――と、いうかリオンは、20メートル近くの水竜だし、コイツに幌馬車を引かせれば、俺が手綱を操作する必要はないし、その方が楽なのでは?


「――妾が、馬の同じ扱いとは……。さすが魔神様……興奮しまずぞ!」


 コイツは駄目だ。

 早くなんとかしないと。


「――では、魔神様」

「魔神と呼ぶなと言っただろう? 興奮して呼び方が代わっているぞ? 少し落ち着け」

「申し訳ありませぬ。では、妾が代わりに引きましょう」

「そうだな。だが、次の町まで待て。ここで馬を離すと魔物の餌になりかねないからな」

「分かりました」

「カズマ。何かあったんですか?」


 話しが一段落したところで幌馬車から顔を出すエミリア。



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