第82話 今日から、お前、馬な!(2)
「――いや、特に何もない。それよりも、エミリアの方はどうだ? 順調なのか?」
「当然であろう! 妾が、魔法のイロハを教えておるのだから!」
「お前には聞いてないから」
「相も変わらず、マスターは辛辣であるな」
「むーっ」
俺とリオンの話を聞いていたエミリアは頬を膨らませ――。
「何だか、リオンちゃんとカズマって、すごく仲良くないですか?」
「気のせいだ」
「ふっ、マスターと妾の間には何人たりとも立ち入ることは出来んからな。まぁ、奥方様は別として――」
「奥方様なんて……」
俺の嫁扱いをリオンからされて満更でもない模様。
「そういえばエミリア」
「はい?」
頬に手を当てたまま俺の方を向いてくるエミリア。
「じつは、こいつ獣人なんだが――」
「やっぱり!」
「やっぱり?」
「だって、人間の匂いじゃなかったので……。それで、どこの出身なんですか?」
「馬だな」
「馬?」
「ああ、ケンタウロス族って知っているか?」
「はい、聞いたことはあります。伝説の種族ですよね? もう絶滅したって聞きましたけど……」
「その生き残りがコイツだ」
公式設定では、この世界はケントウリ族が文明を伝えたという事になっている。
そのケントウリ族の原型がケンタウロス族。
なので、馬という設定にしておく。
馬族なら、馬車を引かせても何の問題もないからな。
まあ、見た目が幼女だから馬車を引かせるのは問題があるかも知れないが問題ないだろう。
別に、この世界には児童相談所とかないし。
それに、コイツの元々の中身は最強のモンスターの一匹だからな。
「そうなんですか……。どうりで馬が怯えていると思いました」
「ああ、だから、次の町に着いたら馬は町の商業ギルドに引き取ってもらって、リオンに引いてもらおうと思っている。こいつ、こう見えても俺達より長生きしているからな」
「だめですよ! まだ、小さいんですよ?」
たしかに常識的な範疇から見ればそうかも知れないな。
「リオンが、自分から志願した事だからな。俺も止めたんだが、どうやらケンタウロス族というのは馬車を引いてないと死んでしまう病に罹っているらしい」
「本当ですか!? リオンちゃん!?」
「――いや、そんな奇病に罹った覚えは……」
「もう! 驚かさないでください。――でも、馬車を引きたいのは本当なんですか? でも、その身体だと……」
リオンの小さな体を見てエミリアが心配そうな表情で呟く。
たしかに普通に考えて幼女に幌馬車を引かせるのは見た目からもアウトだな。
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