第85話 森林の中の町(3)

 村の広場の広さは、日本で言う所の新宿アルタ広場前程度はあり、幌馬車を停める広さは余裕である。

 広場の中央部分に幌馬車を停めたあと、すぐに幌馬車から降りるが、一目で10人以上の村人が倒れているのが確認できた。


「リオン! エリア系のヒールは使えるか?」


 水竜アクアドラゴンは、アルドガルド・オンラインの世界における最強のモンスターの一匹。

そして四竜の中では、もっとも回復魔法に特化した竜でもある。

 その竜が、回復魔法を使えるかどうかは微妙なところであったが、


「マスター。もちろんだが、範囲回復は回復量に些か難があるぞ?」


 特に問題なく回復魔法は使えるようだ。

 問題は、どの程度の怪我まで治せるかだが……。


「つまり重傷者の回復は難しいという事か?」

「何を言っておる。重傷者は問題ないが死にかけている者は流石に無理だという事だけだ」

「わかった。エリア回復は、どの程度の距離まで有効だ?」

「マスター、この広場が限界と言ったところだ」


 つまり、広場を出た場所にいる住民まではエリア系の回復魔法では治せないということか。


「エミリア」

「はい」

「お前は、リオンが回復できるギリギリの負傷者を広場に運んできてくれ」

「カズマは?」

「俺は村の中を見て回ってヒールをかけてくる。とにかく時間がない。各自、全力を尽くせ」

「了解したぞ。マスター」

「はい!」


 俺の指示で二人が動きだしたのを見ながら、俺はスキル『イーグルアイLV10 』と発動させる。

 幸いモンスターの姿は見えない。

 ただ、かなりの重軽傷者が出ているのだけは確認出来たので、すぐに行動を移すべく移動を開始する。


「まずは、村の一番の外周だな」


 木の板を繋ぎ合わせた一軒家。

 屋根には藁葺が使われており、モンスターからの襲撃を受けた時に立て籠もりが出来るようには作られていない。


 家に入ると、折り重なるようにして年齢としては30代の男女が重なるようにして倒れていた。

 槍に二人とも貫かれた状態の串刺し状態。


「まずいな」

 

 もう殆ど、こと切れる寸前。


「ヒールLV10」


 槍を抜き、すぐに二人にヒールをかける。

 すると時が巻き戻るかのように二人とも一瞬で傷口が塞がり、閉じていた瞼を開けて俺を見てくるが――、いまは時間がもったいない。


 すぐに他の家へと俺は向かう。

 そして、村の外周部の家々で襲撃に会い血塗れになっていた村人を助けたあと広場へと戻る。


 



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