第84話 森林の中の町(2)
「マスター」
「どうした?」
町が見えてきた所で、幌馬車の中から出てきたリオンが話しかけてくる。
「多くの魔物の匂いがする」
「魔物?」
「うむ」
まだ距離があり、魔物が村にいるかどうか見ることは叶わない。
とりあえず向かうしかないだろうな。
「少し飛ばすぞ」
「了解したぞ、マスター」
俺は、馬の手綱を操り馬車の走行速度を上げる。
ただ、それにも限界があるが――、『ヒールLV10』を馬に連打で掛けることで解決した。
「さすがに結構揺れるな」
坂道を下っていく。
時速は凡そ40キロ近くは出ているだろう。
おそらく村に到着するには20分前後は掛かる。
何せ、目の前には大きな森が見えてきたからだ。
「カズマ!?」
唐突な事態に慌てたのはエミリアが幌馬車から顔を出し、俺の名前を呼んでくる。
「リオンと一緒に馬車の中にいろ! 次の町が魔物に襲われているらしい」
「それってリオンちゃんが?」
「ああ、到着したらすぐに戦闘になる可能性がある。準備だけはしておいてくれ」
「分かりました」
エミリアは頷き、幌馬車の中へ戻る。
俺は、その様子を横目で見たあと、馬の手綱を器用に操る。
――そして、坂道を下りきったところで幌馬車は森林の中へと突っ込む。
村の大体の位置は上から確認出来ていたので方向だけを間違えないように馬を操る。
「見えた!」
しばらく走ると、人工物の建物が見えてくる。
どうやら燃えている建物は、そんなに多くはないようだ。
まぁ森の中で――、しかも木造住宅が何棟も燃えたら、それこそ大問題だが――。
村が近づいてくると、燃えている建物だけではなく、村を囲うようにして作られている腰まである木の柵が何か所も壊れているのが見て取れた。
「魔物が襲撃してきているのか? エミリア! リオン! 村に突入と同時に戦闘の準備!」
「はい!」
「了解したぞ。マスター」
壊れている柵を抜けて幌馬車は村の中央部へ。
そして、幌馬車を停めると同時に、俺を筆頭にリオンとエミリアが幌馬車から降りた。
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