第276話 レベリングはゲーマーの性みたいなモノだから仕方ないのだっ!

「ちょっ――、ちょっと待っ――」


 俺が2回目のレベルアップを果たしたところで、グレースが何やら慌てふためき、顔を真っ青にしながら何かを言おうとしてくるが、ここで停められたら俺のレベリングが出来なくなる。

 それでなくとも、最近はずっとレベルが上がっていなかったというのに。

 まあ、上限があったから仕方ないが!

 ただし! 今は上限が解除されている状態だ。

 基本、MMORPGでは強いモンスターを一匹狩るよりも、雑魚モンスターを大量に狩る方が経験値効率がよかったりする。

 それは、アルドガルド・オンラインの世界でも代わらないわけで、レベル30程度のモンスターの経験値が100程度だったとしよう。

 それに対して四属性を司る最強種を討伐した際に得られる経験値は20000程度と微々たるモノだ。

 一匹で数百人のプレイヤーを相手に出来るモンスターの経験値が、たったの20000。

 つまり雑魚を200匹範囲で吹き飛ばして倒した方が遥かに効率がいいのが、初期のMMORPGだったのだ。

 ハッキリ言おう。

 バグじゃねーのか? と……。

 まぁ、それは今更、言う事ではないが……。


「俺の経験値の糧になれー! エリアヒール! そして! コンボで! エーテルストライク!」


 盆地に倒れ伏している兵士たちが、俺のエリアヒールで傷口も塞がり体力も前回になり意識も回復して立ち上がろうとしたところに、上空から精神ダイレクトアタックのエーテルストライクが炸裂する!

 もちろん、物理ダメージも少々発生して、両手足が骨折してアバラ骨が何本か折れて、内臓がちょびっと破裂するくらいの――、瀕死一歩手前のダメージを受けて、それなりの痛みも伴うが、死にはしない! 何故なら、エリアヒールという素晴らしい回復魔法が存在しているからだ!


「完璧だな! エリアヒール!」


 俺の回復魔法により、体中が再生されていく際の痛みで、うめき声を上げながら意識を取り戻す兵士たち諸君。

 もちろん、そこに俺は狙いを定める。


「そして! エーテルストライク!」


 ズドオオオオオオオオオン!

 巨大な爆発が巻き起こり砂塵が舞い上がり、観客席からは何が起きているのか分からない。

 だが! それでいい!

 下手に見えたらレベリングを止められてしまうからな!


「エリアヒール! エーテルストライク! さあ! じゃんじゃん行くぞ! 女王陛下に止められる前になっ!」

「もう、殺してくれえええええええ!」


 おや、どうやら意識を失わない強い兵士がいたらしい。


「エリアヒール! エーテルストライク!」

「光が……光が……光が、広がっていく……」


 上空から降り注ぐ巨大な光の玉を見て、兵士が何かを口にしているが、俺は無視して魔法を破裂させる。


「グアアアアアアアアアあ」


 何やら無数の絶叫が聞こえたが、仕方ない――、仕方ないのだ。

 恨むなら女王陛下を恨んでくれたまえ。

 

「エリアヒール! エーテルストライク! エリアヒール! エーテルストライク! エリアヒール! エーテルストライク! エリアヒール! エーテルストライク! エリアヒール! エーテルストライク! エリアヒール! エーテルストライク! エリアヒール! エーテルストライク! エリアヒール! エーテルストライク! エリアヒール! エーテルストライク! エリアヒール! エーテルストライク! エリアヒール! エーテルストライク! エリアヒール! エーテルストライク! エリアヒール! エーテルストライク!……」




 30分ほど経過したところで――、




 ――必要経験値に達しましたのでレベルが上がりました。

 ――レベルが、400になりました。

 ――ポイントを1、獲得しました。




「レベルの上がりが遅くなったな……」


 今回のレベルアップなんて10分ぶりだ。

 つまり、レベルが上がるたびに次ぎのレベルアップまで時間がかかっている。

 おそらく、これ以上、レベルを上げる為には、さらにコンボによるレベリングが必要になると思うが、5秒間に一回、ワーフランド王国軍には経験値を提供してもらっているので、次のレベルアップが20分かかるとすると240回、半分臨死体験をしてもらう事になるので、それは些か可哀想だろう。


「エリアヒール!」


 とりあえず思考する前に回復魔法をかけておこう。

 死なれたら、流石に目覚めも悪いからな。


「しかし、相も変わらずマゾいレベルアップ仕様だよな……。一レベル上がるたびに必要経験値が倍必要になるとか……。まぁ、それでこそ俺がプレイしていたアルドガルド・オンラインだが……」


 自問自答しつつも、連続魔法発動により舞い上がっていた砂塵や埃などが地面に落ちることで、ゆっくりと視界が確保できるようになっていく。

 すると、兵士たちが死んでいないことは俺以外でも確認できるようになる。

 

「カズマ!」

「どうした? エミリア」

「お母さまが儀式はカズマの勝ちだって!」

「ああ。そういえば、そんなことをしてたよな……」


 レベル上限解放からの、レベリングのために攻撃魔法と回復魔法のコンボでレベリングに集中していたから完全に本来の目的を忘れていた。

 レベリングは、ゲーマーの性みたいなモノだから仕方ない……そう、仕方ないのだ。



 

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