第169話 砂上の戦闘(28)
「――で、君が知りたいことは幾つか検討がつくが?」
室内に入り扉を閉めたところで、ベルガルが俺に話しかけてくる。
俺は近くの椅子に座りながら頷き――。
「ああ、いくつか聞きたいことがある。ここエイラハブの町は、町の規模から言って相当な人間が住んでいたと想像ができる」
「やはり、その事を聞いてきたか」
「まぁな……」
そもそも、この世界よりも後の世界――、アルドガルド・オンラインの世界ではリーン王国付近に砂漠は存在していない。
もちろん、俺のシステム――、MAP画面にもそのような表示はなかった。
それなのに実際は砂漠エリアだ。
「ベルガル。この町はどうなっている?」
「そうだな……。魔王軍と戦っているSランク冒険者の君には伝えても差し障りはないだろう」
「どういうことだ?」
「この町に我々が派遣されたのは半年前だ」
「半年前?」
「ああ、そうだ。それまで定期的に連絡が来ていた町からの定時連絡が突然途切れた。それからしばらくしてから送った斥候が、この付近一帯が砂漠になっている事を発見し、王都へ報告をした」
「つまり、リーン王国は、この惨状をしていて兵士を送ったと?」
「そういうことだ。穀倉地帯が消え去るばかりか、城塞都市デリアや、港町ケインまでの交易ルートが途絶えてしまえば……」
「国力は衰退するということか」
「そうだ。だから我々が派遣された。そしてエイラハブの町から人が忽然と消えてしまった事と、周辺の穀倉地帯が砂漠になった事を調べているということだ。もちろん、エイラハブの町を維持しながらな」
「なるほど……」
つまり、エイラハブの町一帯で起きている穀倉地帯からの砂漠化は、いまだに原因が特定できていないと言う事か。
「あと、お前達の団長だが、商業ギルドの方では殺してくれとまでは頼んでいないと言っていたが?」
「…………あの方は、獣人差別主義者なのだ。――否、それだけではないか。魔王軍討伐に向かった連合軍が壊滅させられた際に、出兵していた兄を無くしている」
「どういうことだ? 魔王軍に殺されて、どうして獣人を憎む?」
「君は魔王軍と戦っていて魔王領と人類領の間に獣人達の国があるのは知らないのか?」
「知らないが?」
そんな事、意識したこともない。
だいたい、俺は勇者でもなかったし、荷物持ちだったからな……、そんな事を気にした事もなかった。
「そうか。獣人達の国ワーフランドは、魔王領と接している。そして――、魔王領からは攻撃を受けていない。それが、人間などが獣人を更なる迫害に仕向けている要因だ」
「なんだと!?」
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