第234話 エウレカとの交渉(2)
「俺は、Sランク冒険者カズマだ」
相手の自己紹介に合わせて俺も自己紹介をする。
それに相手は頷くと口を開く。
「では、カズマ。小竜の件だが、どうして、あのような暴挙に出たのか詳しく聞かせてはくれまいか?」
「そう……なるよな」
金品だけで問題が片付くのはゲームの中だけの話。
実際に交渉をするとなると、相手は原因を知りたいというのは自明の理。
だが、そうなると獣人国を守護する為に小竜を送り込んだと説明することになる。
そうなると、エルフ族と獣人族の間で蟠りが出来るようになるのは必然。
「話せない理由でもあるのか?」
「――いや。じつはな――」
中途半端に説明するよりも、腹を割って話した方がいいと結論づけ、俺は口を開く。
「なるほど……、つまり獣人国の王女でありエミリア王女と結婚している主が、獣人国を魔王から守るために小竜を防衛として向かわせたということか」
「そうなる」
「なるほど、なるほど……」
何度も嫌味なくらいに頷くエウレカ。
ゲームの中では竹を割ったかのようなサッパリとした性格なのに、妙に突っかかってくるな。
「カズマ。それで、汝は非を全て認めて謝罪と金品による保証をするということでいいのか?」
「もちろんだ」
「そうか……。わかった」
「分かってくれたか……。――で、いくら出せばいい?」
俺の問いかけに首を振るエウレカ。
「金品は必要ない。それよりも我が部族の者を、一人、もらってはくれないか?」
「どういう意味だ?」
「小竜を扱うという事は、それなりの竜を従えているということだろう? それなら、我が部族も守って欲しいということだ」
「つまり、ボディーガードとして雇いたいと?」
「それに近いが、それだとお金を払う必要が出てくるかのう。私の妹のサーシャ・ボールドを第二夫人としてもらってはくれまいか? 身内になるのだから、守ってくれるであろう? 魔王から」
「……それが、望みなのか?」
「うむ。それ以外の謝罪は認めないし、獣人国との間でも軋轢が生まれると心得てほしい。我が部族も最近は力を持つ者が減ってきたからな。強い雄を手に入れる為には、なりふり構ってはおられないのだ。幸い、お主は、魔力も戦闘能力もずば抜けていると話に聞いている。どうだ?」
「それは……、エミリアに確認してみないと……」
「なんじゃ。お主、妻の尻に敷かれておるのか?」
「敷かれるというか、あれだ! 恋愛事には妻に許可を取ることは当然だろう?」
「そうか? 王侯貴族なら、当主の意見が絶対のはずだが?」
「まぁ、たしかにそうなんだが……」
俺が済んでいた日本では一夫一妻が常識だったからな。
その常識を、すぐに変更するようなことはできないし……。
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