第116話 デリア総督府消滅(16)

 砕け散り周辺に散乱する白骨――。

 そしてスケルトンが所持していた腐食した刀身や鎧が床の上を転がっていく。


「なんという……。これがカズマ殿の力……」

「アイゼン、呆けている場合か? 急ぐぞ! 総督が居る部屋まで案内してくれ」

「わ、分かった」

「待て! 俺を忘れるな」


 アイゼンを先頭に、俺とラムドが回廊を走る。

 そして突き当りに差し掛かったところで、今度は階段を上っていく。

 大理石を踏みしめる音が響き渡るが、魔物が出てくる様子はない。


「はぁはぁはぁ……、ここに、カーネル・フォン・ハーネス伯爵が居られる」

「執務室か」


 ラムドの言葉に頷くアイゼンは頷くと扉を2回ノックする。

 すると中から「入り給え」という野太い男の声が聞こえてくる。


「どうやら、カーネル様が居られるようだ」

「そのようだな。――ならいくぞ。武器は仕舞っておけよ?」


 ラムドが俺やアイゼンに注意するように語りかけてくる。

 まだ相手が黒だと決まった訳ではないからだ。

 執務室の扉をアイゼンが開ける。


「失礼します、上級騎士アイゼンです」

「分かっておる。――で、侵入者を捉えることは出来たのか?」


 目の前に、その侵入者がいるのだが、いま、俺は扉の影に隠れていて執務室の中にいるカーネルの死角になっていて、俺が居る事は確認できない。


「ちょっといいか?」


 アイゼンが答える前に、軽い足取りで執務室の中に入っていくラムド。


「どうして、彼が――、冒険者ギルドマスターのラムドが居るのかね?」

「カーネル。総督府内に魔物の存在を確認した。そして、魔物は城塞都市デリア内でも出現が確認されている。よって、総督府で何かトラブルが発している可能性があると冒険者ギルドは国の一機関として判断した。これより総督府を改めさせてもらうがいいな?」

「それは困ります」

「何故だ?」

「決まっています。ここは王家の血筋の者が管理する場所。謂わば、聖域。いくら冒険者ギルドであっても許可は――」

「言っただろう? 国の一機関としてと! 忘れたか? 冒険者ギルドは、総督府もしくは指揮をする貴族が居なくなった場合、裁量に応じて行動する権利が国から与えられていることを。それと、この総督府から助け出された女性が居る事も発覚している。カーネル・フォン・ハーネス伯爵、貴公がどんなに反対しようと調査はさせてもらう」


 ラムドの言葉に、執務室内は一瞬、静寂に包まれる。

 すると、笑い声が――、カーネルが狂ったように笑う声が執務室内から聞こえてきた。





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