第115話 デリア総督府消滅(15)
「俺の喧嘩って、カズマ――、お前は……」
ラムドが何か言いたそうな素振りを見せるが、それを中断させるかのように俺が吹き飛ばしたフルプレートアーマーを着こんだ兵士達が、ゆっくりと立ち上がると、おぼつかない足取りで、向かってくる。
「だが、これでは……」
数歩下がるアイゼン。
やはり、元々、同じ仲間には手を出しづらいのだろう。
だが――、
「レベル3の雷属性魔法! ライトニング!」
前方へ青白く光る高電圧の本流。
それらが、向かってきていた兵士達を包み込んでいく。
そして、次々と兵士達が倒れていく。
「雷系の攻撃魔法だと!? しかも範囲魔法!?」
「さて、いくぞ」
如何にフルプレートアーマーであろうと雷の攻撃には無意味。
何故なら雷は金属を伝わってダメージを与えるからだ。
「死んでないよな?」
「スタンガン程度の威力しかない。まず死ぬことはない」
「それならいいが……」
俺はラムドに答えながら、黙ってついてくるアイゼンへと視線を向けると彼女も気がついたようで、口を開く。
「カズマ、兵士を殺さずにいてくれた事を感謝する」
「お前に感謝される謂われはない。それに、普段の俺なら範囲魔法で吹き飛ばしていた」
「――なら、何故……助けるような真似を……」
「エミリアに嫌われたくないからな」
「エミリア?」
「お前は、一度、見たと思うが? それとも、すぐに忘れるほど鳥頭なのか?」
「――ッ!?」
「はぁ、俺と一緒に城門を吹き飛ばされた時に総督府に捕まっていた女性を抱きかかえたまま姿を見せた奴がいただろう?」
「――ま、まさか!? 獣人族の!? そんな……獣人族に情けを掛けられるとは……人間が……」
俺は、アイゼンから視線を外す。
獣人に対する偏見が酷すぎるこの世界に苛立ちを感じながら。
――そして、俺達は総督府の建物の中に入る。
中の床は黒の大理石が敷かれており、壁には白の大理石が使われている事から、その対比のコントラストが美しい。
ただし、中にいるスケルトンなどが居なければの話だが――。
「ば、ばかな!? ――い、一体、何時ごろから、魔物が総督府の中に!?」
「今あることから目を背けるな。まずは魔物を退けながら総督がいる部屋まで向かうぞ」
――そう、ラムドが叫びながらブロードソードを振るいスケルトンの頭蓋を破壊する。
そして床の上へと倒れ砕け散るスケルトン。
「わ、分かっている!」
アイゼンも、腰からブロードソードを抜き放ちスケルトンを一体倒す。
俺は二人を盾にしつつ、視界内のアイコンを高速でタップしながら複数の魔法を同時に選んでいく。
そして、アイテムボックスからダガーを30本、空中へ投げる。
「レベル9雷属性魔法! バレットソード・レールガン!」
雷属性魔法を発動すると同時に空中へと投げたダガーが全て電磁場の影響により空中で停止。
「アイゼン! ラムド! かがめ!」
「何!?」
「――っ!?」
二人は何事かと驚きながらも咄嗟に、その場で屈む。
「いけええええ!」
俺の叫びと同時に、電磁加速され、レールガンと化したダガーが光の軌跡を残し次々とスケルトンを粉砕していく。
――総督府の建物の中。
総督が居るであろう部屋に続く長く伸びる回廊。
場所が恵まれていた事もあり一瞬で百匹以上ものスケルトンを殲滅した。
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