第193話 VS 高山浩二(2)

 高山の叫び声を耳にしながら、俺は指先に力を入れると共に、水平方向へ腕を振るう。

 それに伴い、バスタードソードを手にしていた高山の身体が城壁の上部から吹き飛ばされ城下へと落ち、地面の上を転げていき――、2階建ての建物の壁を突き破り建物が崩壊――、崩れ落ちる煉瓦の下敷きになる。


「さて――」


 俺は首を鳴らし、城壁の下へと飛び降り、高山の方へと向かっていく。

 すると俺が視線を向けていた中、高山を覆い尽くした煉瓦が振動し、白い閃光と共に砕け散る。

 

「なんだよ……。お前も、勇者の力に覚醒したってことかよ!」

「勇者の力?」

「ああ、そうだぜ! この世界に召喚された時に女神に力を渡されただろうが!」


 そんな女神に俺はあった事がない。

 気が付いたら、年齢が若返り異世界で目を覚ましただけだ。


「知らないな」

「けっ! 俺達、勇者の力に対抗できるのは勇者の力だけだ! そして魔王を倒せるのも、勇者の力だけ――! つまり、てめえは勇者の力を持っているってことだ!」

「勇者か」


 俺は自分の称号を確認する。

 

【称号】

▲アイスマン

▲裏切られし者

▲童貞卒業

▲復讐者

▲酒飲みの王

▲浪費家

▲魔王軍の天敵

▲英雄

▲勇者

▲魔神

 

 たしかに勇者の称号はあるが、それはあくまでも魔王軍と戦っている間に習得した物にすぎない。


「何だよ……あるんだろ! 勇者の称号がよ!」

「お前に語る必要があるのか?」


 俺は肩を竦める。

 そもそも俺は高山と禅問答をするつもりは一切ない。

 

「舐めやがって! 俺に楯突いたことを後悔させてやる!」


 バスタードソードを片手に握りしめた高山が、体を捻る。

 そして――、3メートルを超えるバスタードソードを俺に目掛けて投げてきた。

 それを俺は、右手で叩き落す。

 そして、高山がアイテムボックスから同じ大剣を取り出し振り下ろしてきた剣を素手で弾く。


「馬鹿な……!?」


 ザザッ……という音と共に地面の上を滑っていき立ち止まる高山は、俺を睨みつけてきた。


「俺が魔王軍に寝返ったから勇者の力を! お前が、勇者の力を手に入れたのか! だから、それほどの力を――。いや……『雷雲招来! サンダーボルト!』」


 途中まで独白していた高山が雷系の――、勇者が使えるという魔法を放ってくる。

 だが、それは――。


「雷魔法LV8サンダークラウド!」


 俺が発動させた超広範囲雷撃魔法と、高山が発動させた対単体生物で最強の雷撃魔法がぶつかり合う。

 衝撃は周囲に撒き散らされ、辺り一面の建物が雷の余波により吹き飛び、燃え上がり、消し炭になっていく。


「――な、なんだ!? 何なのだ! その魔法は! そんな雷魔法なんて聞いたことがないぞ!」

「何度も言わせるな。殺す相手に、情報を与える馬鹿がどこにいる?」


 たしかに高山浩二が発動したサンダーボルトの魔法は単体最強の魔法。

 だが、それはアルドガルド・オンラインにおける黎明期の前までの魔法に過ぎない。

 10年以上続いたMMOであるアルドガルド・オンラインでは、サンダーボルトの魔法はLV3程度の魔法。

 そして、俺が放った魔法はLV8の魔法であり、アルドガルド・オンラインで、黎明期を過ぎプレイヤーのレベルが高レベル化した時に実装された魔法。


 その魔法の威力の差は10倍以上。

 よって――。


「ぐあああああああ。俺の最強の勇者の魔法が! 押し負けて!?」


 そう――、超広範囲魔法と言っても威力は雲泥の差であり範囲も別格の魔法に高山が放った魔法が勝てる訳もない。

 数秒の拮抗の後に、高山浩二が放った雷魔法は、俺の雷魔法に喰い尽くされ。


「ぐああああああああああ」


 俺の放った魔法の直撃を受けた高山は、絶叫の声をあげる。

 




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