第192話 VS 高山浩二(1)第三者side

「ほう。まさか生きていたとはな……」


 田中一馬と、視線が絡み合った高山浩二は、不敵に笑うと椅子から立ち上がり跳躍する。

 百メートル以上の距離を飛び、そして――、城壁の上へと巨大ば爆音と振動と共に降り立つ。


「久しぶりと言えばいいのか? 一馬」

「ああ。久しぶりだな。高山」

「よく俺だと分かったな? 一馬」

「ふん。その醜悪な姿と立ち振る舞い、そして元・勇者と言う名前――、あとは兵士から聞いていたからな」


 田中一馬から見れば背丈は倍以上。

 体の厚みは3倍近くあり横幅に至っては5倍近くある巨体である黒き鱗に覆われた竜人。

 体重だけでも1トン近い元・勇者を真っ向から見据えながら田中一馬は肩を竦めながら答える。

 そんな田中一馬の態度に違和感を覚えた高山浩二は、口を開く。


「ずいぶんと冷静じゃないか? 俺達に、パシリとして使われていたいじめられっ子の分際でよ!」

「何時の話をしている? それとも、この俺を殺そうとしていた時の記憶のままで、貴様の俺の評価は止まっているのか?」


 大胆不敵に言葉を返す田中一馬に、高山浩二の額に血管が浮かぶ。


「ずいぶんと自信がついたようだな! まぁ、ラッセルを倒せるほどの力を手に入れたから仕方ないかも知れないが! この俺は、ラッセルよりも遥かに強いぞ!」

「それは楽しみだ。能書きはいい。さっさと掛かってこい!」

「よかろう! ここで、貴様との因縁も終わりだ! 跡形もなくバラバラに殺してやるよ!」


 高山浩二が、高らかに叫ぶと同時に空間に亀裂が走る。

 そして、柄の部分だけで1メートル。

 刃の部分に至っては3メートルを超える肉厚のバスタードソードが姿を現す。

 高山は、柄を握り片手でバスターソードを横薙ぎに一閃したあと――。


「さあ、死ね!」


 頭上からバスタードソードを、音速を超える速度で振り下ろす。

 音速を超えた剣速は、一瞬で砦の一部を吹き飛ばし煙を巻き上げる。


「消しとんだか! クククク……ハハハハハハハッ!」


 あまりの威力に土埃が舞い上がり、田中一馬が居た場所は視認することは出来なかった。

 そして少しずつ煙が晴れてくる。


「その程度か?」


 そう感情を乗せない言葉を彼は――、田中一馬は口にする。

 人差し指と中指だけで真剣白刃取りをしていた。

 それを見て、高山浩二が驚き、田中一馬から距離を取る。


「何をした!? 一馬!」

「何を? ただ指先で受け止めただけだが?」

「馬鹿な! 貴様の戦闘力で! レベルで! この俺の攻撃を受け止められる訳がない!」


 

 


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