第191話 VS 戦神ラッセル

「カズマ……」


 そう俺の名前を呼んだスキンヘッドの初老の男。

 そいつは右腕を失い、噴き出る血を止血しようとしているのか左手で脇の下を指圧していた。


「ベルガル無事か?」

「ああ……」


 すでに顔は蒼白であり、いつ絶命してもおかしくない怪我。


「そうか……」


 俺はエリアを指定して周囲に『ヒールLV10』の魔法を発動させる。

 すると俺を中心に光の魔法陣が展開され、本の一欠けらでも命の炎が残っている人間を――、四肢を失っていたとしても瞬時に肉体を修復し再生させ復活させる。


「――なっ! こ、これは……。回復魔法か? これほどの神聖魔法を冒険者が扱えるなんて……」

「ベルガル。魔王軍は、俺が抑えておく。お前は生きている兵士をまとめて商人たちが逃げた方向へ避難しろ」

「だが! たった一人では!」

「お前達が居ても足手纏いになるだけだ!」


 俺は土属性魔法の『アースウォール』を発動させ破壊された城壁を塞ぐと同時に、俺に向かって放たれた炎の槍を素手で撃ち落とす。


「――くっ……。分かった……」


 ベルガルは唇を噛みしめると、階段を降りていこうとするが、足を止めた。

数百のサンド・リザードマンなどが、復活した冒険者に追撃をするために階段を上がってきたからだが――。


「風魔法LV6トルネード!」


 俺が発動させた風速30メートルを超える竜巻は、階段ごとリザードマンを切り刻み、集まっていた冒険者の横を通り過ぎ幾つもの建物を破壊したあと消滅する。


「ベルガル! 急げ!」

「分かった!」


 ベルガルは城壁を伝うようにして下に降りていったあと冒険者に指示を出し始めた。

 それを横目で見ながら、俺は正面の魔物に意識を向けていた。


「まさか、ラッセルが居るとはな……」


 戦神ラッセル。

 アルドガルド・オンラインでは、初期のイベントに出てきた神という設定の存在。

 

「ふむ。まさか私を知っている者がいるとは思わなかったが、どこで聞いていた?」

「さあな?」


 俺は肩を竦める。

 アルドガルド・オンラインで初期の頃にイベントボスとして出てきた戦神であったが、その強さは、当時にプレイヤーにとって脅威の一言であった。

 何せHPが200前後が当時の最高のHPだったにも関わらず400ダメージという確定ダメージを叩きだしてくるから だ。

 まぁ、10年以上のサービス期間中にプレイヤーのHPは1000近くになっていたから、後期の頃には雑魚モンスターと同じ扱いであったが。


「まぁ、よい。この私の鎌を弾いた、その技量! そして、いまの攻撃魔法に、回復魔法! どこの神と契約をしているかは知らぬが、この戦神にどこまで通じるか見てやろう!」

「そうか……。さっさとかかってこい!」


 早めにラッセルを仕留めないと、外にいる魔物の相手を同時にするのは面倒だからな。


「大言壮語だな! 人間よ! アストラル・ブレード!」


 そうラッセルが叫ぶと同時に、俺に斬りかかってくるラッセルの両手の中には対になる赤い2メートル近いロングソードが形成される。


「ソード・バレット!」


 俺は電磁誘導で加速させたダガーを放つ。

 それらはレールガンとなり、俺に斬りかかってくるために近寄ってきたラッセルの身体を貫き吹き飛ばす。


「き、きさま……卑怯だ……ぞ……。美しくな……」

「ああ、そういう良いから! 火魔法LV10 エクスプロージョン!」


 俺の炎の魔法が発動。

 大気の粒子が収束し、核反応を起こし、反転し原子崩壊を起こす。

 その際の、焦点温度は1億度。

 

「グォオオオオオオオ」


 俺の炎の魔法によりラッセルは瞬時に消滅した。


「さて、あとは――」


 俺は城壁の上から魔王軍10万の大軍を見て指を鳴らす。

 それと同時に魔王軍の中心に巨大な地竜が姿を現し、魔王軍を蹂躙していく。


「さて、エミリアのことはリオンに任せるとして……」


 俺は視線を高山浩二へと向けた。





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