第147話 砂上の戦闘(6)

「マスター、何か見えたのですか?」

「俺がいる反対側の方向から火の手が上がっているな」

「火の手ですか?」


 リオンの問いかけに答えた所で、エミリアは怪訝そうな表情をする。

 やはり、エイラハブの街で何かしらの思いがあるらしい。

 

「マスター。それで、どういたしますか?」

「そうだな……」


 俺は火の手が上がる街並みを見ながら思考する。

 正直、何が起きているのか分からない現状では下手に動くのは危険だと言わざるを得ない。

 まずは、情報収集が大事だろう。

 それにエミリアも町が襲撃されているのに率先して助ける為に動こうと提案してこない辺り、不可解だ。


「まずは情報を集めてくる。リオンとエミリアは、そのまま待機。自身の身に危険が迫った時のみ反撃を許可する」

「了解した」

「エミリアも、それでいいな?」

「――は、はい……」


 心ここにあらずと言った様子で頷くエミリア。

 少し心配になったが、リオンが一緒にいるのだから問題はないだろう。

 俺は、すぐに火の手が上がる方へ向かう為に城壁から降りる。

 すると、10メートルほどの通りには人通りは無かったが、周囲の建物からは幾つもの気配を感じとることが出来た。

 

「なるほど……」


 俺は独り言を呟きながら人通りのまったくない石が敷き詰められた町の通りを走る。

 周囲の建物は、石で組まれた建物ばかりで殆どが一階建てと言うべきもの。

 窓や扉は木材で作られており、今はそれらが締め切られている状態。

 つまり、建物の中に籠城していると考えられる。

 

「やはり魔物が攻めてきたのか?」


 エイラハブの街は砂漠の中に存在している。

 つまり町から出て逃げようとした場合には、ある程度の物資が必要となる。

 主に水などが――。

 それらを用意せずに逃げるのは自殺行為に他ならないので、建物の中に立て籠もっているのだろう。

 それは、容易に想像がつくことだが……。


「本当に、それだけか?」


 思わず自問自答してしまう。

 そもそも魔物が本当に攻めてきたのなら、まずは逃げることを優先するべきことだろう。

 止まっていても、防衛側が倒されて町の中に魔物が侵入してくれば魔物に殺されるだけなのだから。

 そうなると、魔物を倒せるだけの兵力が存在していて、兵士が魔物を倒すまで建物の中に逃げているとなれば分からなくもないが……。


「釈然としないな」


 しばらく火の手が上がっている方向へと走ると、思い思いの鎧を着た男女の姿が見えてくる。

 中にはローブを着こんでいる男女も居る事から、魔法使いや神官なども居る事が伺いしれた。

 だが――、人の数が多すぎて何が原因なのかが分からない。


「仕方ないな」


 俺は強化されたステータスに物を言わせて近くの建物の上へと飛び移る。

 そして建物から建物へと移動していき――、


「あれは……」


 視線の先には、尻尾を生やした人間――、いや……獣人が数十人おり、その獣人らを装備が統一された兵士達が取り囲んでいた。

 

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