第75話 さあ、報復の時間の始まりだ!(6)

「ギャアアアアアアア」


 痛みの音色を聞きながら、俺は冷えていく心を自制しながら言葉を紡ぐ。


「お前は、日本語が理解できないのか? 俺は、お前の俺の家族へ行ってきた仕打ちに関して聞いているんだが? 一言でも、俺が話した文脈の中で、謝罪してほしいなんて言葉が入っていたか?」

「……は、入っていないです……」


 弱々しく答えてくる皆月。

 その足元には青い血の血だまりが広がり続ける。


「だろう? なら、お前のパパがやったことはどう思うよ?」

「……悪いことです」

「だよな!」


 俺は、もう一本のダガーを投げつける。

 まるでダーツゲームの要領で。

 投げたダガーは皆月の刺さっているダガーの傷口にめり込むようにして柄まで深々と刺さる。


「アアアアアアアアアアッ」


 再度、聞こえる悲鳴。


「次だ。お前のママは教育委員会のお偉いさんだったよな? 俺が虐められた時に、お前のママは何て言いましたでしょうか? 10秒以内に答えろ」

「10」

「そんなの……」

「9」

「わかるわけが……」


 すでに、痛みと恐怖から顔をぐしゃぐしゃにして涙と鼻水を垂らして、必死に言葉を紡いでくる皆月。

 だが、俺の心には何も響かない。


「8」

「わかんない」

「7」

「わからないのよ!」

「6」

「助けて……」

「5」

「もう痛いのは嫌なの……」

「4」

「だから」

「3」

「お願い! 何でもするからっ!」

「2」

「だから、もう酷いことを――」

「1」

「お願いだからっ!」

「ゼロ」


 時間が来ると同時にダガーを投げる。

 それは、またしても腹部へと命中。


「キャアアアアアアアアアアアッ」

「正解は、お前の母親は虐められる側に原因があると言ったことだ。SNSでも叩かれていたよな? まぁ、お前のママとやらは、娘のお前が俺を虐めていたのを学校で目撃した時に、俺に対してゴミが――と、俺に向けて言った言葉は覚えてないぞ?」

「…………それは、ママが勝手に……」

「おいおい、人のせいにしてんなよ。子の責任は親の責任――、そして親の責任は子供の責任だろ? 連帯責任って事を学校で習っただろ?」

「……こんなの、こんなの……おかしいっ……。どうして……。どうして……」

「そうだな。お前の今までの行いの結果に過ぎないな」


 俺はダガーをアイテムボックスから取り出すと、皆月の頬に突き立てる。

 もちろん死なないように加減は忘れない。


「良い事を教えてやるよ。虐めた側は、すぐに虐めたことを忘れるかも知れないがな! 虐められた側は、何十年経とうとも忘れる事なんかねーんだよ!」


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