第136話 城塞都市デリアⅡ(7)

 夕食も摂り、就寝するために部屋へと向かう。

 もちろん、大人の事情という事もありリオンとは部屋は別だ。


「マスター、お休みなのだ」

「ああ、おやすみ」


 部屋に、一人入っていくリオン。

 そして扉が閉まったところで――、


「カズマ。リオンちゃんを一人で寝かせておくのはいいのでしょうか?」

「良いも悪いも、アイツは俺達より遥かに長生きしている竜だからな。寂しいという感情はないんじゃないのか?」

「そうでしょうか……。リオンちゃんが、たくさん食事を摂ったのも、色々とあっての事だと思いますが……」

「そうか?」


 一応、人間の……しかも幼女の姿恰好をしているリオンは、エミリアからしてみれば保護欲を駆られるらしい。

だが、俺には魔物としてのリオンの印象が強いために、まったく、保護欲をそそられる事はない。

 この辺は、アルドガルドオンラインでゲームをしていた俺と、異世界だけで暮らしているエミリアとの感覚の違いなのかも知れないな。

 だが、俺が別の異世界から来たと今更言うのもな……。


「まぁ、何かあったらリオンから言って来るだろう?」

「でも、リオンちゃんって、どちらかと言いますと素直になれない子みたいな……」

「ツンデレか……」

「ツン? 何ですか? それって……」

「いや、何でもない」


 アルドガルドオンラインの設定では竜の性格のプロフィールなんて存在していなかった。

 つまり四竜の性格についての情報は一切ない。


「とりあえず、気にかけておくか」

「はい」


 俺の言葉に、エミリアは小さく頷く。

 そして――、俺とエミリアは二人で部屋に入り就寝。




 ――翌朝。


 日差しが昇り、夜が明ける。

 俺は、開け放たれた両開きの窓から外を見る。

 視界には、朝焼けに照らされた城塞都市デリアの情景が見えるし、何よりも太陽が本日も黄色く見える。


「眠いな……」


 思わずボソッと口から零れる。

 エミリアが何度もとしつこくオネダリしてきた事もあり、付き合って頑張っていたら、夜が明けて、すでに外は明るい。

 つまり、俺は一睡もしていない。


 ちなみにエミリアは、満足そうな顔でベッドの上で横になっている。

 もちろん、俺もエミリアも、結婚はしているのだから、当然の営みと言っていいのだろうが……。


「今日から、幌馬車での旅だからな。リオンが一緒にいると、出来ないからな……」


 さすがに情事を見せて喜ぶほどの特殊な性癖を俺やエミリアは持ってはいない。

 しばらくは、男女関係のそういう事が出来ないという事もあり、エミリアも張り切ったのかもしれない。

 何せ、獣人は妊娠適齢期になると、発情すると以前にエミリアが言っていたし。


「とりあえず、ひと眠りしてから冒険者ギルドに行くとするか」


 さすがに、まったく睡眠をとらずにラムドやソフィアに竜籠を使えない理由と説明をするのは、大変だからな。





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