第196話 復讐の時間だ! 覚悟はいいな!(3)

「とりあえずリオン待ちだな」

「それは、この勇者を何とかすると言う事ですか?」

「そうだな」


 呪法で、皆月茜と同じようにしてもらう必要があるからな。

 

「あと一人か……」

「主様?」

「いや、何でもない」


 思わず呟いた言葉に、地竜が反応してきたが態々、話す必要もないだろう。

 

「エンブリオンが、この廃墟に来るまでは時間がありますね」

「――ん? そうだな。エミリアを護衛しているリオンには、しばらくは町から距離をとって身を潜めて護衛しておくように言っておいたからな」


 俺は返答しながら、視界内のMAPアイコンを選び選択。

 そして、MAPを表示すると共に、リオンが思ったよりも早い段階で近づいてきているのを確認した。


「速度が遅いな?」

「何かあったのですか?」

「――いや、リオンがこちらに向かってきているみたいだが、アイツがこっちに向かってくるのなら、もっと移動が速くていいと思ったんだが……」

「なるほど……。それにしても、我らが四竜の場所が瞬時に把握できるとは、さすがは魔神様なだけはあります」

「とりあえず言っておくが、俺は魔神ではないからな」

「――いえ。それだけの魔力を持っている人物に、私は心当たりがありません! 魔神様です!」

「そうなのか」

「はい。私をボロ雑巾のように蹴散らしたほどの魔法を使われたのですから当然です!」

「そ、そうか……」


 頬を赤らめ体をくねらせている地竜を見ながら、俺は少しドン引きしながら相槌を打った。

 



 しばらくしてリオンが合流。

 一人だけ先行してきたリオンに勇者の体を加工するように命令する。

 リオンが、一人だけ先に来ていたのは僥倖と言える。

 すぐに高山浩二を、皆月茜と同じように壺の中で生ける死体として呪法で固定した。


「それにしても、10万の魔物と勇者と死神を、マスター一人で倒してしまうとは……」

「エンブリオン! 私も居たぞ!」

「ふん」

「二人とも下らない意地の張り合いをするな」

「ハッ」

「承知」

「まったく……」


 俺が溜息をつき、しばらく城壁に体を預けていると、何十人もの兵士達が姿を見せた。

 その中にはエミリアも居て、リオンから聞いていたがどうやら意識を取り戻したらしくベルガルの横に立っていた。


「カズマ!」

「エミリア、無事か?」

「はい。それより、カズマは無事だったのですか?」

「ああ」

「でも、大量の魔物の足止めをしていたとベルガルさんから聞きましたけど……」

「全部倒した。勇者も含めてな」

「勇者も……? ――ということは……」


 エミリアの視線が、俺の傍に置かれている蓋のされた壺へと向けられる。


「ご推察のとおりだ。とりあえず、無事でよかった。痛いところとかはあるか?」

「ううん」

「それならいい」

「ちょっといいか?」


 俺とエミリアが会話していたところで、ベルガルが恐る恐ると言った様子で話しかけてきた。






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