第238話 銀髪褐色の深窓の令嬢(4)
話が一段落ついたところで宴の席に白いドレスを身に纏ったダークエルフが入ってくる。
「かなり名の知れた職人が手掛けたドレスですね」
「そうなのか?」
「はい」
横に座っていたエミリアが、それまで黙っていたのに、俺にアドバイスをしてくる。
「恐らくは、テロメア王国の裁縫師が手掛けたモノだと思います。大きく開いた胸の部分の刺繍に特徴が見られますから」
「なるほど……」
俺は、大きなメロン大の胸を見ながら何度も頷く。
「カズマ?」
「――いや、何でもないぞ。それよりも、エミリアは博識だな」
「大国アルドノアの衛星王国の首都ですから」
「そうか」
「カズマ様。お姉さまより、先ほど合図を頂きましたが、婚約を承諾して頂けて嬉しく思います。本日より、このサーシャ・ボールド、カズマ様に命を捧げる所存です」
――お、重い……。
「よろしくな」
「はい! それで、本日は契りということで、お部屋を用意してあります」
「えー。エミリア?」
「ダークエルフ族は、暗殺を生業とするエルフ族ですから、婚約が成立したあとは、すぐに血の契りを交わすことは有名で……」
少しお怒り気味のエミリアが説明してくる。
そんな俺に対してダークエルフの族長エウレカはドヤ顔で口を開くと――、
「カズマ殿。女人の決意に対して、まさかとは思いますが――?」
「はぁー。わかった! わかったよ!」
ここまで来たら据え膳食わぬは男の恥という奴だ。
「カズマ、無理をせずに頑張ってくださいね」
エミリアは、気分的には良く思ってないとしても、王族としては、正しい事とは理解しているのか――、
「それでは、カズマ様。こちらへ――」
そう話しかけてくるサーシャは優雅な動きで俺の前に立つと、盃を手にしていた俺の手を取り歩き出す。
仕方なく、俺も席から立ち上がり、彼女のあとを追うと、族長の家と渡り廊下で繋がっている小さな巻貝の家に到着した。
「こちらが私の部屋になります」
そう案内してくれた部屋は、小綺麗に纏り清掃の行き届いた部屋。
ただし、壁には剣やナイフに弓矢などが飾られているあたり、暗殺者を生業としているダークエルフ族なんだなと思ってしまう。
「ささっ、カズマ様」
すでに20畳ほどあるリビングの中央にはキングサイズのベッドが置かれており、枕は一つしかない。
そんなベッドの上に、サーシャは背中から倒れ込む。
彼女が着ているドレス。
煽情的なスリットの入った体にピッタリと張り付くような白いドレスを着たサーシャは、足を動かして太ももを見せてくる。
「カズマ様。至らぬ点はあると思いますが夜伽に関しましては、暗殺業を生業としているダークエルフに生まれた者として、しっかりと教育を受けておりますので、安心してください」
「お、おう……」
随分と積極だな……。
あまり性急すぎると男としては引くんだが……。
ただ、女性から誘ってきて断るというのは男として――、まぁ、勿体ないというか、その……なんだ……、仕方ないのだ。そう、仕方ない。
だって! 国同士の外交の問題もあるのだから。
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