第19話 港町ケイン(8)
「薬草がある場所か」
エミリアと二人で、野原を歩くこと10分ほど。
俺は薬草に関しての知識はまったくない。
何せ、勇者組と活動していた期間は、店で薬草よりも効果が高いポーションを購入していたし、ゲーム時代に採取クエストはあった。
だが、画面上で光って教えてくれていたのは、それは、あくまでもゲームシステムの設定によるものでスキルでもなんでもない。
つまり、今の俺は完全な役立たずである。
「ありました!」
エミリアが、屈んで薬草を取り、それを俺に渡してくる。
そして、俺は受け取った薬草をアイテムボックスへと収納する。
完全にエミリア任せ。
「――はあ」
「カズマさん、どうかしましたか?」
「――いや、俺さ。完全にエミリアに養ってもらっているよな」
「そんなことないです」
「そうか? 猪の解体も、エミリアが一人でやってくれているよな」
「人には得て不得手がありますから! 元気を出してください!」
「ありがとう」
エミリア、本当にいい子だな。
どっかのいじめっ子の女に爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい。
まあ、飲んでも変わらないと思うが。
「カズマさん」
「――ん?」
「敵です」
「敵?」
周囲を見渡すが――、俺には見つけることが出来ない。
注意深く探したところで――。
――スキル『気配感知LV1▲』を習得しました。
――と、視界内に半透明のプレートが開きログが流れる。
すかさず俺は気配感知をレベル10まで上げ、再度、周囲を確認すると、視界内に違和感を覚える。
「あれか?」
臥せっている大きな茶色いモンスター。
「そのようです」
「――ようやく俺の仕事だな」
近くに落ちているこぶし大の石を手にとり投げる。
すると偶然にスキル『投擲LV10』が発動したのか、臥せっていた魔物にクリーンヒットした。
「ぶひいいいいい」
怒りなのか分からないが叫びながら、こちらへと突進してくる。
大きさは歌う森で倒した猪の3倍、――いや、4倍はあるか?
腰から鉄の剣を抜き放ち、すれ違うと同時に剣を横薙ぎする。
すると、猪は上下に真っ二つに切れた
「すごい獲物ですね」
「だな。これだけあれば当分食えると思うが……、まぁ――、冒険者ギルドで幾らで買い取ってくれるかで決めよう」
「そうですね」
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