第43話  俺の奢りで宴だ!

「それで、カズマさん。金貨の方はどうしますか?」

「どうするとは?」

「枚数が枚数ですので持ち運びするのが大変な場合は、ケインの冒険者ギルドで貯蓄しておくことができます!」

「あ、5万枚もらいます」

「――え?」

「いや、手元に現物はあった方がいいかなと……」

「――で、でも! 無くしてしまうかも知れませんよ?」

「たぶん、大丈夫だから」


 するとソフィアはバツが悪そうにボソッと「いま、金貨がないんです……。出来れば分割で払わせてほしいです……」と、小声で話してくる。

 お金がないなら、どうして最初から分割と言わないのか。

 もしかしたらマニュアルとかあるかも知れない。


「どういう意味だ?」

「今回、大規模討伐クエストがありましたので、冒険者の方や多くの参加頂いた方に報奨金を払いましたで……」

「つまり、それでお金がないと?」

「はい。一応、本部の方からは金貨5万枚を、魔王軍四天王を倒した人物に渡すように言われているのですけど……」

「でもお金がないんだろ?」

「はい……、残念ながら――」

「無いモノを払えって言っても無理だからな。分割もそうだが、他の店でアイテムとか装備を購入した時ってツケとか効くのか? 冒険者ギルドの名義で」

「はい! カズマさんは、勇者でも無いのに魔王軍四天王を一人で倒したとケインでは有名ですから!」

「なるほど……。とりあえず俺が倒したのは極力広めないでもらえるか? 恥ずかしいし」

「分かりました。名誉なことなのですけど、残念です」


 俺としては、俺が生きていることが勇者組に知られる方が問題だからな。

 相手が油断しているかどうかは復讐を果たす上で難易度は全く違うし。


「それじゃ出かけてくる」

「分かりました」


 ソフィアにツケで商品を買う事を伝え――、エミリアの方を見ると、クエストボードに貼りだされている依頼書を見ている。

 そして俺の視線に気がついたのか駆け寄ってくる。



「カズマさん! どこに行く予定なんですか?」

「武器防具屋だな。あとは魔法薬とか扱っている店」

「カズマさんの装備って、普段着に鉄の剣だけですものね」

「まぁ、この方が動きやすいから良いんだが……、何かあった時に困るからな」


 エミリアと会話しながら、武器屋や防具屋を見て回る。

 残念ながら大した装備は無く――、村人の服から、丈夫な服になった程度。

 武器だけは鉄から鋼の剣を手に入れ、ポーションも幾つか買い込み、それらをアイテムボックスに入れておき冒険者ギルドに戻る。

 もう日は暮れていて、冒険者達はモンスターの剥ぎ取りなどが終わったようで酒を飲んでいた。


「おう! カズマ! すげえ報酬もらえるんだろ?」

「ふぉふぉふぉ。たまには、みなで酒を交わすのも良いかもしれんの」


 カンダタさんといつも一緒にいる冒険者が俺に話しかけてくる。

 そして――、それに追従するかのようにカンダタさんが話しかけてきた。


「ふっ――」


 これは明らかに莫大な報酬を貰ったのだから、奢れという合図というかプレッシャー。

 まぁ。今回の魔王軍討伐は俺だけの力じゃない。

 皆の力を借りた。

 それは揺るぎない真実。


「よし! 今日は、魔王四天王を勇者以外が倒した祝いの日だ! みんな! 俺のおごりだ! 好きなだけ頼めえええええ」


 莫大な報酬があるのだ。

 全員に使っても問題ない。

 たまには嵌めを外すのもいいだろう。

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