第44話 おかしいぞ? 借金が出来たんだが!?

「――んっ」


 艶めかしい声と共に、俺は欠伸をしながら目を覚ます。

 隣には、エミリアが裸で寝ていて、とても眼福だ。

 まぁ、何があったかは、俺は呑みすぎて記憶が吹っ飛んでいるので、何も覚えていないのが問題なのだが――。

 俺のスキル『状態異常無効化LV10』は何をしているのかと、突っ込みを入れたいが、酒には効かないのかも知れない。

 そうなると、スキルに頼った飲み方はよろしくないのかも知れないな。


 一人考えながら、昨日のことを思い出そうとするが、『俺が奢ってやるぞ!』と、言ったあと記憶が飛んでいる。


「駄目だ……。何も思いだせん」

 

 とりあえずエミリアの艶やかな銀色の光沢を放つ尻尾触りながら、さらに耳も触って堪能する。

 すごく癒される。


「カズマ……さん?」

「――お、おはよう!」


 俺は、エミリアが目を覚ますと同時に咄嗟に両手を離しながら爽やかに挨拶を返す。


「おはようございます。カズマさん、私の尻尾と耳を触っていましたよね?」

「だ、駄目だったか?」

「――いえ! それにしても、カズマさんは大胆ですね」 


 ――何が大胆!?

 何故か突っ込みを入れてはいけない気がして「そ、そうか?」と、だけ返しておく。


「そ、そうだ! まずは冒険者ギルドに行かないと不味くないか?」

「どうしてですか?」


 まずは話題を変えないと在らぬ望まない方向に話が進む気がする。


「ほら、色々あるだろ? 魔物の処理がどうなったのか? とか――」

「そうですね。それでは、すぐに着替えます」


 エミリアは、俺が見ている前で下着と服を着ていく。

 それを俺は……、横目でチラッと見ておいた。


 宿から出たあと、冒険者ギルドに向かう道すがら、俺は首を傾げる。

 何故か知らないが、至るところに酒瓶や酒樽が転がっているからだ。

 まるで祭りの後のようだ!


「頭が痛いです……」


 どうやらエミリアは飲みすぎで頭が痛いらしい。

 俺の場合は、スキルで何とか回復していたが記憶だけが吹き飛んでいるのが問題だな。




 ――カランコロンという音と共に冒険者ギルドの両開きの戸を開く。

 いつもは整然としている冒険者ギルド内もお酒や、料理が乗っていたであろう空の大皿が、テーブルの上に並んでいる。


「あ……カズマさん……」


 俺に話しかけてきたのはソフィアで、足元がおぼつかないように見える。


「もしかして二日酔いか?」

「はい。昨日は呑み過ぎで――、魔王軍がリーン王国の王都を攻めていた事からお祭りは殆ど中止になる可能性があったので、その代わりに昨日はお祭りがありましたから」

「何かあったのか?」

「覚えてないんですか?」

「――お、おう」

「とりあえず、こちらが請求書になります」

「請求書? 俺、金貨5万枚あったよな? どうして、請求書?」

「えっと、カズマさんが昨日の夜に『よし! 今日は、魔王四天王を勇者以外が倒した祝いの日だ! みんな! 俺のおごりだ! 好きなだけ頼めえええええ』とか、宣言していたので町を上げてのお祝いをしました」

「なん……だと……」


 俺は請求書を確認する。


「請求金額……金貨2万5千枚だと……。これって、俺が預けていた金貨5万枚を省いた金額なのか?」

「はい。町の人は、皆が言っていました! さすが、四天王の一角を倒した英雄だと!」

「――いや、俺は別に町の人全員に奢るとは一言も……」

「皆と言っていたので……」

「俺のスローライフが……」


 金貨2万5千枚の借金とか25億じゃねーか!

 どうやって稼ぐんだよ!


「カズマさん。魔王四天王を倒せば、借金が返せます!」

「……」


 俺は、そんなバカバカしい理由で魔王軍と戦わないといけないのかあああああ!

 納得いかねえええええ!

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