第48話 金がない!

 ――カラカラと軽快な音を立てながら荷馬車が街道を東へと進む。

 

「カズマさん」

「――どうした?」


 荷馬車の荷台から、頭だけ出して俺に話しかけてくるエミリア。

 

「もう、ケインの町を出発して3日経ちますけど、モンスターも何もでませんね」

「そうだな」


 俺は頷きながら幌馬車に繋がる馬の手綱を巧みに操る。

 もちろんスキル『騎乗LV10』の恩恵を受けながらである。

 騎乗スキルLV10は、ゲーム内でも馬を乗って移動することが良くあったので取得しておいたものだ。

 なので、幌馬車を借りて少し走っただけでスキルが解禁になった。


「カズマさんは、すごいですよね」

「なんでだ?」

「だって、最初は、幌馬車を走らせるのも難しかったのに、すぐにベテラン並になりましたし……」

「まぁ、人に得て不得手というのがあるからな。それでエミリア」

「はい?」

「そろそろ昼飯をかねて休憩をしよう」

「そうですね」


 幌馬車を街道に停め昼食を摂ったあとは、幌馬車の中で休憩をする。

 長時間、馬の手綱を操るには、スキルの恩恵があったとしても疲れるし、何より馬の休憩もあるからだ。


「そういえば地図上では、そろそろ町ですよね?」

「そうだな。もう少し先進むと、ハイネの町があるらしいな」


 俺の視界内に表示されているMAPには、まだハイネの町は表示されていないが、その内、出てくるだろう。

 夜の間は、エミリアに馬車の中で警戒してもらい、昼間にエミリアが寝ている間に、俺が馬の手綱を操り進んでいる。

 

「ハイネの町って、どんなところ何でしょうか?」

「さあな。その辺の知識は、まったくないからな」

「カズマさんにも分からない事があるんですね」

「俺を買いかぶられても困るな」

「そうなんですか?」

「ああ、むしろ何も知らないまである」

「それって、自慢出来る事なんです?」

「自慢は出来ないな」


 二人して幌馬車の中に敷いた布団の上でゴロゴロしながら会話をしつつ今後の予定を立てる。

 もちろん、ハイネの町に行った時の事を含めて。

 正直、そろそろ何か鎧っぽいモノが欲しかったりするのだが、正直、俺の好みには合わないので、少し丈夫な服を着ている程度。

 装備という観点から見れば、服のジャンルに入るので装備ではない。


「とりあえず、ハイネには何か良い武器屋か防具屋があればいいんだけどな」

「――でも、お金ないですよね……」

「それな……」


 リーン王国は魔王軍に襲われるようになってから、国内で定期的な連絡幌馬車が途絶えて久しいらしく、連絡幌馬車はまったく町や王都間を走らなくなった。

 危険度が通常の比ではないので冒険者の護衛もつかないので、従者も外には出たがらない。

 その為に流通を担当していた商業ギルドは倒産。

 多くの幌馬車が、資産的にゴミと化した。

 だが、俺達は王都まで行く必要があったので、幌馬車を手に入れる必要があった。

 おかげで、幌馬車を買う事は出来たのだが……それでも金貨の大半は吹き飛んだ。

 つまり何を言いたいのかと言うと――、金がない!



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