第47話 おいおい、中抜きかよ

「それでは、カズマさん。お仕事を受注ってことで宜しいでしょうか?」

「そうだな」

「それでは、こちらをどうぞ」


 ソフィアが渡してきたのは、冒険者ギルドカード。

 俺の場合は、Dランク冒険者ギルドカードはずだが、ランクのところはFと書かれているが、縁の色が黒くなっている。


「新しい冒険者ギルドカードか? 縁の色が白じゃなくて黒色になっているな」

「はい。一応、カズマさんは力を隠しておきたいという事でしたので冒険者ランクは上げていませんが――、将来有望な冒険者という事で黒色にしておきました」

「へー。将来、有望な冒険者の場合は冒険者ギルドカードの縁を黒く塗るのか」

「そうですね。ただ――、基本的に冒険者ランクで判断しますので縁の色を塗るのは稀です」

「だが、それだと色々と面倒なことを押し付けられないか?」

「そこは大丈夫です」

「何が大丈夫なんだ?」

「じつは、黒色の冒険者ギルドカードを持っていることは、冒険者ギルドに多額の借金をしている事も含まれますので……」

「なるほど。違う意味で面倒事を押し付けられる未来しか見えないな」

「そこをどう判断するかは各町の冒険者ギルドのギルドマスターや職員なので……」

「嫌な予感しかしない」

「そんなこと言わないで受け取ってください」

「――いや、俺は普通の冒険者ギルドカードでいいから」

「――え? せっかく作ったのに?」

「さて、そんなモノより、まずは仕事の依頼の内容に関してはだいたい分かったから、まずは、書類を寄こせ。王都が無事な場合は、向こうの王都の冒険者ギルドマスターに確認とらないといけないんだから手続きの書類とか必要だろ?」

「仕方ないですね」


 ソフィアが差し出してきた茶色の封筒。


「それじゃ、次に前金をくれ」

「前金?」

「金貨1枚しかないからな。ちなみに王都まで、どれくらい掛かるんだ?」

「2週間くらいですね」

「なるほど……。なら、前金をくれ」

「はい」


 差し出された袋を受け取り、俺とエミリアは冒険者ギルドを出る。


「あ、カズマさん!」


 俺達の後を追って冒険者ギルドの建物から出てくるソフィア。


「なんだ?」

「その金貨が入っている袋ですけど、一部は借金返済ということで半分抜いておきました」

「そ、そうか……」


 どうやら、この世界は中抜きという酷い事が平然と行われるらしかった。



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