第46話 仕事の依頼

「世知辛い世の中だな」

「それが真理です」

「そういえば、ソフィアは、この辺に住んでいるのか?」

「――いえ。出来合い物を買いにきただけです」

「なるほど」


 確かに市場には屋台とか並んでいるからな。


「――じゃ、またな」

「え!? ――ま、まってください!」

「なんだよ。何か用があるのか?」

「いえ。用といえばそうなんですけど――。普通に考えて、こういう所で会った場合には女性に何か奢ったりするのがマナーなような……」

「どこの世界に、仕事だけの付き合いの女に飯を奢る必要があるんだ?」

「そこはカズマさんが男の度量を見せて、高級なレストランでディナーを!」

「好きにしてろ。俺は金がないんだ」

「ちなみに、いまはおいくらほど?」

「金貨数枚だ」

「私の月収は金貨4枚ですから、問題ないですね」

「とりあえず俺は帰る」

「カズマさあああん」


 まったく、最近のソフィアは俺にやたらと親しげに話しかけてくるから好意を持っているかと勘違いしてしまうな。

 

「おい! 俺に捕まるな! 金貨1枚もないんだぞ!」

「――え? そうなんですか?」


 ささっと俺から離れるソフィア。

 

「でも、カズマさん。お金稼いでいますよね?」

「収入より出費が多いんだよ」

「じゃあな」


 さっさと俺は公共の風呂場に行ったあと、宿に戻る。

 部屋には、すでに毛布を丸めて抱き枕として寝ているエミリア。

 俺は、それを見て布団に入り眠りについた。




 ――翌朝……、冒険者ギルド内において――。


「とくに、それらしきクエストはないな」

「そうですね」


 俺とエミリアは借金を返すために、現在、クエストボードで仕事を探し中である。

 ただ一つ、問題は、金貨2万5千枚も返済するほどの効率がいい仕事         がないのだ。


「さすがに薬草採取とか、銅貨とか銀貨の報酬だとな……」

「はい。私の予測ですけど、魔王軍が進軍してきた時に魔物も根こそぎ集めて攻撃してきたのでは? それで魔物の討伐が無くなったかもですね」

「あの……」

「それじゃ困るな」

「あのー」

「はい。魔物討伐が一番、お金が稼げるんですけどね」「

「あの! 二人とも、私を無視しないでください!」

「なんだよ。ソフィア」

「なんか、最近――、私の扱い酷くないですか?」

「そういう扱いを受けるような態度を最近、取っているからだろ」


 とりあえず、俺は突っ込みを入れておく。


「もう! お二人とも稼げる仕事を紹介しようと思ったのに!」

「本当か! 久しぶりにソフィア、役に立つな!」

「仕事を振るつもりが無くなってきました」

「ソフィア、偉いぞ! ――で、仕事ってのは何だ?」


 俺の持ちあげにソフィアは溜息をつく。


「リーン王国の王都へ、港町ケインの現状の報告と、王都がどうなっているかの確認をお願いします」

「報告は分かるだが、王都の現状確認?」

「はい。魔王軍が、リーン王国の王都を攻めてきていたのは報告が来ていたのですが、その魔王軍が攻撃を仕掛けてきた理由が知りたいのです」

「それって、もしかして――」

「はい。王都が魔王軍により落ちている可能性があります。そのために王都まで行ってもらえますか? 危険な道のりになると思いますので、諸経費含めて金貨300枚で依頼をしたいと思います」

「仕方ないな……。お金がないからな。それで仕事の依頼を受けるとしようか。エミリアも、それでいいか?」

「はい!」


 まぁ、まともな仕事がないから受けるしかないんだけどな。



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