第222話 王都からの脱出(1)

 エミリアが、部屋から出ていき数時間が経過したころ、ノックの音が鳴り響く。

 そして、返事を待たずに開く扉。

 そこには、ドレス姿のエミリアが居て、リオンと一緒に部屋に入ってきたところで、まっすぐにベッドに座っている俺の元へと歩いてくる。


「疲れました。カズマ」


 体中から力が抜けたかのように倒れ込んでくるエミリアは、ドレスを着ているというのに、ベッドの上で転がりながら俺に体を寄せてきた。


「お疲れ様。話し合いはどうだったんだ?」

「一応、事前の話し合いとしては上手くいったと思います」

「それは良かったな。それと、リオンもご苦労だった」

「マスターの命令ですので」

「そうか」

「褒美を頂けるのでしたら!」

「やらないからな。それよりも、エミリア」

「はい?」

「獣人国とリーン王国との間では同盟は出来ると思っていいのか?」

「はい。やっぱりカズマの尽力がありましたので。リーン王国側も、カズマの助力が得られるということは大きかったと思います」

「そうか」

「はい。それと――、カズマの借金ですけどリーン王国が返済してくれるそうです」

「ほほう。そうなるとツケで買い出しにいくのもありだな」

「今現在の借金らしいので……」

「それは残念」


 何ならアイテムボックスに入りきるまで、鉱石とか武器や防具を買い占める予定だったが、そのプランは頓挫だな。


「そういえば、女王陛下がカズマと個人的に会いたいと言ってましたけど……」


 恐る恐ると言った様子で俺を見てくるエミリア。


「どうして個人的に会う必要があるんだ? 俺は、王族と関わるのはごめんだな。面倒事にしかならない気がするし」

「そうですよね」


 ニコリを微笑んでくるエミリア。

 その様子から、どうやらシルフィエット女王は、俺を国に取り込もうと考えていることを何となく察する。

 まったく、面倒なことだ。


「あ、あと女王陛下から、カズマが、どのくらい滞在するのか聞いてきましたけど……」

「――ん? 明日、冒険者ギルドに報告に行ったら、ワーフランドに旅立つ予定だったが?」

「そうなんですか?」

「ああ。別に、この国に居ないといけない用事とかないからな。それなら、エミリアの故郷に向かった方がいいだろう。エミリアを娶ったことも、エミリアの両親に報告の挨拶にいかないといけないからな」

「カズマ……」

「とりあえずだ。明日、出立をする。王宮側には、冒険者ギルドに報告に行くとか適当な事を言っておけば問題ないだろ」

「マスター。それでは北に向かうということですか?」

「まぁ、そうなるな」

「主様。それでは我は馬車を王都の外に移動しておいた方がよいですか?」

「そうだな。王都の外に馬車を移動しておいた方が、王宮側も何かと詮索してこないだろ」

「了解しました」


 そう告げてくるとイドルは、バルコニーに通じる窓を開き外へと出ていってしまう。

 どうやら、今日の夜から行動を開始するつもりのようだ。




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