第223話 王都からの脱出(2)
「カズマ」
「何だ? エミリア」
「イドルと集合場所を決めていませんでしたけど、大丈夫なのですか?」
「奥方様。魔神様は、我らの場所を感知する力を持っております故、何も問題ないのです」
「そうなの?」
「まぁ、魔神ではないが、イドルもリオンも目立つからな」
「――でも、普段は、一般人と変わらないですよね?」
鋭いツッコミがエミリアから入る。
まぁ、エミリアの言う通り問題を起こしていない時は、二人は美幼女と美少女と言った括りはあるが、一般人との見分けは難しい。
「それでも、俺には何となく分かるんだよな」
「カズマが、そういうのでしたら大丈夫だと思いますけど……。やっぱり竜と戦って勝つと何かしらの縁が出来るのでしょうか?」
「それは分からないが、そんなものなんだろうな」
俺は言葉を濁す。
何故なら、俺の力の根拠を、俺自身知らないからだ。
あくまでもアルドガルド・オンラインのシステムを利用しているに過ぎない。
そこに、どのような関係性があるのかを、俺は未だに把握できていないし、それをエミリアに話せば、俺が異世界から召喚された人間だと言う事も分かってしまう。
それは、話したくはないな……。
とくに前は話したくないと思っていたが、魔王軍に寝返って問題行動ばかり起こした奴らと同郷だとは余計に思われなくないからな。
「とりあえず、今日は寝るとするか」
「はい。私は、湯浴みをしてきます」
エミリアが、部屋から出ていく。
ドレスの着付けに関しては分からないが、外からドレスを脱ぐのを手伝って欲しいと話しているのが微かに聞こえてきたから、俺が関与することではない。
「マスター」
「どうした?」
考え込んでいると、リオンが唐突に顔を上げて話しかけてきた。
「明日は、妾はしばらく一人で行動していても大丈夫ですか?」
「別に構わないが――、集合場所は分かるのか?」
「もちろんです。マスターの場所と、同龍の存在する場所は――」
「なるほど……。それなら構わないが、何か、ここの王都に行きたい場所でもあるのか?」
あくまでもゲーム内の記録だが、水龍アクアドラゴンは、ハイネ城と所縁ある湖周辺しか活動はしてないし、戦う場所も湖の底に限られる。
つまり、王都リンガイアでは、水龍アクアドラゴンに関わるゲーム上のデーターは無いはずだ。
「マスター、食べ歩きというのをしたいと思っております」
「なるほど……」
そういえば、リオンは食事するのが最近のトレンドだったな。
おかげで城塞都市デリアでも食費だけで、経費がヤバい事になってエンゲル係数がうなぎ登りだったからな。
「――で! マスター! お願いがあるのですが!」
「お金だろ」
「はい……」
俺はアイテムボックスから硬貨が入った袋を取り出し、リオンへと渡す。
それにしても、世界の龍種の全てを統べる四竜の一匹が、きちんとお金を払って飲食をするようになるとは……、成長したな。
少しばかり感慨深いものがある。
「マスター。礼を言います」
「気にするな。それよりもエミリアと一緒に行ってくれないか?」
「奥方様とですか?」
「ああ。気分転換にもいいだろう? 戦時下だったとは言え、戦勝したばかりだからな。それなりに浮かれるやつも出てくるだろうし」
「畏まりました」
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