第221話 王族同士の会談(3)

 ――そう、言葉を返す。


「見解も何も、それが全てであると思っております」

「ですが、冒険者ギルドに登録をかけたから、リーン王国の市民というのは、あきらかに暴論なのでは?」

「カズマの身分の保証は我がリーン王国が後ろ盾となっております。つまり、我が国の民と言って差し障りないと思っております」

「――では、カズマは私の……私のワーフランドが後ろ盾となって戸籍を用意したいと思います」

「人間の戸籍を獣人族の国がですか?」

「何をおっしゃりたいので?」

「カズマは、人間であり獣人族ではありません。それは、エミリア王女もご理解されていると思います」


 カズマの超常的なまでの力を必要としているリーン王国としては、獣人国ワーフランドに、カズマを取られたくないというのが本音であった。

 シルフィエット女王としては、カズマの力を何としてでもリーン王国の為に取り込みたいという腹づもりがあり、引く訳にはいかず、侮蔑に近い言葉を紡いでしまっており、彼女自身も、それを途中から気が付いてはいたが謝罪をするという行為はできない。

 秘密の会談と言っても、王族同士の会談という場であったからであった。

 場の空気は張り詰めていく。

 そんな中、動く人間がいた。


「シルフィエット様」

「ラウルフ、何か?」


 リーン王国の女王に話しかけたのは港町ケインで冒険者ギルドマスターをしていた元・宮廷魔術師の男であった。


「カズマという人物を手懐けることは出来ないと思います」

「どういうことか?」

「名誉も、お金も必要ないと謁見の間で申していたではありませんか。おそらくですが身分どころか戸籍すら必要としていないのでは?」

「そんなことが……」

「そうでなければ謁見の間で陛下から何かしら褒美を受け取っていたはずです」

「それは……」

「それに冒険者は根無し草です。どこの国にも所属したくないという人間は大勢います」

「……ですが!」

「陛下。カズマ殿は言っておられました。エミリアは自身の伴侶だと。それを謁見の間でです。陛下も、この意味が分からないとは思いませんが?」

「……わかった」

「ご理解頂けて幸いです」

「エミリア王女、申し訳なかった」

「いえ。気にしていません。ただ――、カズマは私の夫であり旦那様です。私の夫に手を出すことは止めてください」

「……分かりました」

「ギルドマスター、ありがとうございます」

「ほっほっほっ。カズマ殿とエミリア殿は、冒険者ギルドの人間。謂わば身内みたいなモノですからな。多少は、力を貸すものやぶさかではないというところですかな」

「では、エミリア王女。次のことですが――」


 シルフィエットは、疲れた様子で口を開く。

 

「まず同盟関係の話ですが――」


 そう口火を切ったシルフィエット女王陛下。

 国内の問題も含めて、話し合いは数時間に及んだ。




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