第61話 ハイネ城炎上!(8)

「それでは、あの神殿に水竜が……」

「まぁ、遠からず近からずと言ったところだな」

「それは、どういう意味で――、それにカズマ殿は、どうして水竜やハイネレイドに関して、そこまで博学なのか?」

「さっきも言っただろう? 冒険者は――」

「分かりました」

「それでは、ここからは俺とエミリアの二人だけで湖底に降りていく。何かあったら困るからハイネの町に住む人間を全員、城の地下迷宮へと避難させておいてくれ」

「――え!?」


 ヘイゼルが驚いた声を上げたが、ハイネ城の地下には初代ハイネ城主が強大な魔物を封じた迷宮が存在している。

 ただ、扉で、地下迷宮への入り口は封じられているので、その扉前までなら住民を避難させる事は可能なのだ。

 そして、扉前までだけでも広大な地下空間が広がっているので、ハイネの町の住人を避難させておくには十分すぎる広さがある。


「任せたぞ。いくぞ、エミリア」

「はい!」


 俺とエミリアは、湖畔から、水が消えた湖底へと降りていく。

 視界の端には、巫女服を着たエミリアの姿が見えるが、その巫女服には、いくつかの金の刺繍が刻んである。

 刻んでいる刺繍は、『即死無効化』『対属性耐性』『身体強化上昇』などのスキルだ。 

 これでもアルドガルド・オンラインでは、初期の後半程度のありふれた防具程度の性能しかない。


「カズマ。本当に良かったのですか?」

「何がだ?」

「――いえ。城の地下迷宮のことを離したときにハイネ領主様は驚いた表情をしていましたけど……」

「まぁ、気にしない」


 そもそもゲーム開始から5年後にハイネ城の地下迷宮が解禁されるのだ。

 その時に、住民は全員、知っていたというテキストが追加される。

 つまり、俺が知っていても何の問題もない。


「よし」

「到着しましたね。それにしても……、かなり深いんですね」

「そうだな。琵琶湖くらいの水量があるからな」

「ビワコ?」

「俺が住んでいた場所にあった湖だ。まぁ、今度、暇があったら――」

「はいっ! 楽しみに待っていますね!」

 

 エミリアの嬉しそうな言葉に、俺は頷き返し、神殿の中へと足を踏み入れる。

 神殿の中は、外の石造りのような形ではなく、神殿内部が赤く光る金属により装飾されている。


「これは……」

「銅だな」


 アルドガルド・オンラインでは、水竜アクアドラゴンの神殿は、オリハルコンで作られていたとテキストで書かれていた。

 そしてオリハルコンというのは、地球でもアトランティスが使っていたという浮遊金属としうて有名だが――、一説によると、その金属は銅であると――、それが有力説とされている。


 神殿の中を、真っ直ぐに歩いていくと、壁には巨大な魔法陣が描かれていた。

魔法陣の大きさは、直径20メートルほどはあるだろう。

さらに魔法陣は発光を繰り返している。


「この魔法陣は……」


 あまりにも大きな魔法陣の存在にエミリアは、自分で呟いた言葉にも気がついていない。

 それは衝撃的すぎるものだったのだろう。


「竜の巣、アクアドラゴンの領域に通じる門だ」



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