第60話 ハイネ城炎上!(7)

「カズマ殿。準備は整ったと兵士から話を聞いたが、どのような準備をされたのか?」


 俺を迎えにきたヘイゼルの馬車に揺られながら湖畔に向かっている間に、ヘイゼルが、俺がどのような用意をしていたのか気になって尋ねてくる。


「話し合いに必要な為の道具だな」

「道具? それは、一体……?」

「冒険者は自分の本当のことはクライアントにも、仲間にも話さない。それは自分の身を守る為であり、切り札にもなるからだ。それは理解してくれ」

「……わかった。カズマ殿を信じよう」


 俺とヘイゼルが緊張感ある話をしていた所で、俺の横に座っているエミリアは嬉しそうな様子でネックレスを手に取って見ている。

 そんなに、喜んでくれるのなら、今度、イヤリングでも作って送ろう。

 むしろスキルを増やして、付与できるスキルを付与できるだけ装飾品に付けるのもありだな。


 そんな事を考えていると馬車は湖畔に到着したのか静かに停車する。

 もちろん、その際に馬の嘶きが聞こえてきた。


「到着したようですな」


 まずは領主が馬車から出ていき、俺とエミリアも馬車から降りる。

 もちろん、エミリアには俺のエスコート付きだ。


「ずいぶんと、その獣人の子を大事にしているのだな」

「まぁな。妻を大事にしない夫はいないだろ?」

「なるほど……。冒険者には豪胆な人が多いと聞くがカズマ殿はさすがであるな」


 ハイネ領主は、褒めているように話してくるが、やはり言葉の端からは獣人を蔑んでいるのが良く分かる。

 ただ、それは無意識の悪意という奴なのだろう。


「――それで、カズマ殿。どのように湖底に行かれるので?」


 ヘイゼルは、ハイネの町の中心部――、巨大な湖の湖底に存在する水竜の巣まで、どのように行くのか検討がついていないらしく、興味津々と言った様子で聞いてくる。


「簡単な話だ。漆黒の闇の魔法! ブラックホール!」


 俺は、叫びながら視界内のコンソール画面で高速でアイテムボックスを開く。

 そしてハイネの町の中心部に存在する巨大な湖のハイネレイドを選択。

 湖の水は、俺の手のひらの中へと巨大な濁流となり呑み込まれていく。

 

「か、カズマ殿!? 一体――、こ、これは!?」

「一時的に、物質を空間内に圧縮し閉じ込める魔法だ」

「なんと!? そんな魔法が!?」

「これなら、水だけを閉じ込めて、あとで放出すれば湖は元通りだ」

「なるほど……。てっきり、水が消えてしまうと思いました」


 ヘイゼルと話している間にも、湖の水量は目に見える形で減っていき湖底が見えてきた。


「あれは……」

「アクアドラゴンの神殿だ」

「おお、あれほど巨大で神秘的な神殿が湖底に……」


 俺達の視界に、湖底から姿を現したのはヨーロッパで言う所のギリシャ神話に出てくるような巨大なパルテノン神殿のような建物。


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