第183話 エミリアの真相(2)
「だが、魔神の祭壇って、人間には関係なくないか?」
魔神の祭壇。
それはアルドガルド・オンラインにおける闇の魔法を覚える場所で、リオンの話だと魔神が降臨した場所。
つまり、四竜とか魔物などには関係あるが人間には、利用価値が無い。
「人々は、魔王に対抗するために、ここの祭壇を利用しようと考えたの」
「魔王に対抗するため?」
「はい」
話が、今一見えてこないな。
「それなのに、どうしてエミリアが必要なんだ?」
「私の一族は妖狐族です。そして、妖狐族は、神を降臨させる力を持っていると言い伝えられています。だから――」
「魔神を降臨させて、魔王に対応しようとしたということか?」
俺の言葉にエミリアはコクリと頷く。
「だが、地竜と契約をしていたんだよな?」
「はい。そして地竜ウェルザーは、竜の契約を重んじる方で、私が別の存在と契約する事を知った時、エイラハブの町を攻撃してきたのです」
「それで、エイラハブは壊滅したということか?」
予測に反してエミリアは頭を左右に振る。
「いくら地竜でも、それはできないです」
「――なら、一体……」
「エイラハブの町は、私の従者を人質にした人間に脅された結果、私が途中まで行っていた儀式の中断の余波により、その代償に全ての人間は塩と化しました。さらに周囲の緑豊かだった土地も全て砂漠に……」
「なるほどな……。――で、その従者は……」
「神の力を降ろしていた私以外は全員死にました。そして、そのあと、私は自分の中に存在していた竜の契約の力と、中途半端に降ろした魔神の力がぶつかり合い気が付いた時には王都カルバストロに居ました」
「テロメア王国の王都カルバストロか」
「はい……」
テロメア王国の王都カルバストロ。
俺が仲間に切り捨てられた国であり大国アルドノアの北方に位置する国。
「そこで俺はエミリアと出会ったということか」
「私の手配書は大国アルドノアが自身の支配していた植民国に流していたので、すぐに見つかってしまい……」
「なるほどな」
エミリアは静かに座り込む。
「私がもっと上手く立ち回っていたら、エイラハブの人達も死ぬことは無かったと思います……」
「だが、エイラハブの住民が利用しようとしたんだろ? そのために、人質を取った……。なら正当防衛とは言わないが、仕方ないだろ」
「――で、でも! 多くの人の命を奪ったのは代わりないです。本当は何度も死のうと思いました……。でも! 私が死ねば獣人国が地竜から受けていた庇護が無くなってしまいます。だから、私は、どんなに苦しくても死ぬことは出来ませんでした……。結局、私は大勢の方を死なせたのに、自分は、責任をとって死ぬことができないんです」
「エミリア……」
「幻滅しましたよね? 私は、カズマだけには嫌われたくなかった。だから、話したくなかった。だから!」
「何度も言っただろう? どんな事情があっても俺はエミリアの味方だと」
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