第182話 エミリアの真相(1)

「分かった」


 俺は頷く。

 そしてエミリアが決心した表情で口を開いたところで、視界内に敵性反応が表示された。


「カズマ……?」

「まだ生きていたみたいだな」


 さすが、アルドガルド・オンラインの世界において最強最古の四竜の一匹と言われただけはある。

 俺のチート魔法を喰らって生きているとは思わなかった。

 

「マスター」


 反応があった方向へ向かおうとしたところで、リオンが語り掛けてくる。


「どうした?」

「あとは、妾に任せてもらえますか?」

「……大丈夫なのか?」

「はっ。もはや虫の息ですので……」

「そうか」

「ご心配はされなくても問題はありません。魔神様に作られた竜同士は感知能力で互いの事がある程度は把握できますゆえ」

「なら、任せた」


 いまは地竜よりもエミリアの方が重要だ。

 リオンが問題ないと言っているのなら任せて差し障りはないだろう。


「リオンちゃん。気を付けて」

「問題ありませぬ」


 リオンの後ろ姿を見送る。

 そして……、


「暑いな」


 戦っていて気にしていなかったが、流石は砂漠。

 日射病になるくらいの太陽光がジリジリと肌を焼くのが実感できる。


「ですね」

「なら――」


 俺は風魔法で天候を操作し雲を局地的に作り出す。

 そして周囲に水と土の魔法で水辺を作り、涼が取れる環境を作り一息つく。


「カズマの魔法って本当に万能ですよね」

「それほどでもない。それよりも話の腰を折ってしまったが、話してもらえるか?」

「はい」


 彼女は頷く。

 そして――、語り出す。

 獣人の国で何が起きたのか。

 そして、再契約の時にアルドノアが実行支配している国から、襲撃を受けたことを……。


「そうか……。本当、碌でも無いことしかしないな。あのアルザスは……」

「カズマは知り合いなのですか?」

「まぁな。俺も、アルザス王には迷惑をかけられたからな」

「そうなのですか……」

「――で、地竜が語っていたエイラハブのことだが……」

「エイラハブは、襲撃を受けたあとに私達が売られた場所なんです」

「どういうことだ? エイラハブから獣人の国ワーウルフまでは、かなりの距離があるが……」


 少なくとも3つほど国境を跨がなければ、獣人の国を攻めた衛星王国アドリアには辿り着かない。


「カズマは、この地に魔神の祭壇があるのは知っていますか?」

「ああ、知っているが……」

「人間は、魔神の祭壇を利用しようとして、地竜と契約した私を、この地まで連れてきたの」

「魔神の祭壇を? それって、俺が魔法でついでに破壊した魔神が降臨した遺跡でいいんだよな?」

「はい」


 



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