第181話 VS 地竜ウェイザー(4)

「おのれ! おのれ! おのれ! おのれ! おのれ! おのれ! おのれ! おのれ! おのれ! 人間がっ!」


 地竜が叫ぶと同時に、周囲の砂漠が鳴動し――、次々と砂地が隆起していく。

 そして10メートル近くのドラゴンが生み出されていく。


「リオン! 俺から距離をとれ」

「はっ」


 エミリアをリオンは抱き上げ、後方へ跳躍し百メートル近くの距離を俺から取る。

 それと同時に数十匹の小型の地竜が放った超圧力の砂のブレスが全方位から俺に向けて放たれる。


「貴様が、どれだけ強かろうと! この攻撃を受けられる訳がない!」


 さらに本性を現した地竜が数万に及ぶカラーコーンのような形をした鉄の杭を砂漠から魔法で生成していく。


「なら、見せてやるよ! 本気のチートってやつをな!」


 視界内に表示されていく無数の魔法のアイコン。

 それらを思考で高速に発動していくと同時にコピー&ペーストして貼り付けていく。

 そしてさらに発動。

 それらを思考の限界速度まで加速し多重発動させる。


「多重積層魔法! クラウド・ハリケーン!」


 数百、数千に及ぶサイクロンの魔法が重なり合い巨大な暴風が生み出される。

 その時速は、音速を超える。

 ゲーム時代に、一度はシステムサーバーを落したほどの魔法であり、運営から禁止を受けた禁断の風魔法。

 その風速は、カテゴリー5である135ノットを遥かに超える。

 俺を中心に発生した、暴風なぞ生易しい風の牙は、俺に殺到しつつあった超高圧のサンド・ブレスを拭き散らすばかりか本体である地竜が生み出した鉄の杭すら射出まえに捩じ切りズタズタに切り裂く。


「アガガガガガ」


 さらに威力が加速的に増していき周囲に召喚されたドラゴンを欠片も残さず粉砕し――、そして地竜本体も、途中で絶叫が聞こえたあと、バラバラになったのか視界が血の色に染めあげられていく。


 そして――、チート風魔法が停止したあと、俺を中心にして砂は全て吹き飛び、遺跡すら消し飛び、地竜だった肉片だけが残った。


「マスター!」

「無事だったか?」

「はっ。それにしても……、この魔法の威力――」

「カズマ! 無事だった?」


 感嘆の声をリオンが上げていたところで、一歩一歩近づいてくるエミリア。


「ああ、少しやりすぎた感はあるな」

「――地形が変わっているものね」

「そうだな」


 俺はエミリアの言葉に頷く。

 そして俺は、どうしてもエミリアに問いただすことがあった。

 もう、遠慮はしない。

 決めたからな、俺は――。


「エミリア。教えてほしい。エイラハブの町で何があった? そして地竜との契約とは何のことだ?」

「……それは」

「大丈夫だ。お前が、どんな事に巻き込まれていても、俺はお前の手を離すような事はしない。だから教えてくれ」


 俺の言葉に唇を噛みしめ、胸元に手を持っていき握りしめる様子をエミリアは見せる。

 そして――、顔を上げ俺を見てきた。

 それは決意をした人間の瞳。


「うん。それじゃ、聞いて……カズマ」


 




 


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