第104話 デリア総督府消滅(4)

「気にする事はない。それよりもリオン」

「はっ、マスター」

「瘴気というのは、たしか不死系のモンスターに深く関わりがあったよな?」

「さようで」

「なるほど……」


 そうなると、いくつか符号してくる事があるな。

 そもそも、都市の中をスケルトンのような化け物がうろついていたら、必ず都市の住民に見つかって問題なる。

 そうなると、スケルトンを召喚したと考える方が妥当だが……。

 そんなことをすればリオンが一瞬で看過するだろう。


「リオン。魔物は、どこから現れた?」

「それが、宿の方から出てきました」

「そうか」


 ――となると……、瘴気の出どころは――。


「セリアン」

「は、はい。なんでしょうか?」

「あんたの主人は瘴気にやられて療養中だと話を聞いたが、それは本当か?」

「は、はい。夫は地下に貯蔵していた食料を取りにいって、時間が経過しても戻って来なかったので、それで見に行きましたら……」

「意識を失って倒れていたというわけか?」

「は、はい……でも、何故?」

「――いや」


 少し裏を取る必要があるな。

 

「旦那さんを治療したい。療養中の場所を教えてくれないか?」

「それなら、総督府の――」


 そこまで言いかけたところで、セリアンが大きく瞼を開く。

 彼女も、総督府の地下に捕まっていたのだ。

 そして、その夫は総督府で療養している。

 これは偶然では片づけられない。

 むしろ偶然で片付けたら、それこそおかしい。


「カズマ」


 心配そうな表情で俺を見てくるエミリア。

 

「エミリア。ミエルの匂いに近いものは他にはなかったか? 総督府の中だが……」

「いえ。セリアンさんだけです」

「そうなると……」


 最悪、死んでいるのか――、もしくは……、どこかに移されたのか。

 まったく……。


「とりあえず、冒険者ギルドにいくぞ。セリアン、冒険者ギルドの場所は教えてもらえるか? ――と、いうか付いてきてくれるか?」

「――え?」

「今回の一連の騒動の原因には、総督府が関わっている可能性が非常に高い。王家の人間が総督府の管理を任されているのなら――、もし総督府のトップが関わっているのなら、君達の身柄を守れるのは、同じ国で管理されている冒険者ギルドくらいなものだ」

「そんな……」

「ママ……」


 事態の大きさに、震えているミエルを強く抱きしめる母親のセリアン。

 

「カズマ。なら早くしないと」

「ああ、そうだな」

「とりあえず冒険者ギルドまで護衛する。話しは、それからだ」


 まずは、二人の身柄の安全を最優先。

 まったく、次から次へと面倒事しか起きないな。

 

 



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