第103話 デリア総督府消滅(3)

「ママーッ!」


 俺が抱きかかえてセリアンを裏庭に居るであろう、リオンとミエルの元へ連れ帰ったところで、俺の腕に抱きかかえられていた母親を見るなり、全力で走ってくる。

 俺は、彼女を――セリアンを地面に下ろす。


「ミエルっ!」


 両手を大きく開くセリアンの胸元に抱かれるミエル。


「ママっ! ママッ!」

「ミエル――」


 抱き合う母娘の姿。

 それを見て、エミリアが俺の服裾を握ってくる。

 その表情――瞳には涙を浮かべていて何かを堪えているように映るのは、きっと俺の気のせいではないだろう。

 何故なら、エミリアは母親と、もう一生会えないのだから。

 

 ――そして気がつく。遅いくらいに……。


 俺が、ミエルの母親を助けに行く時にエミリアは怒っていたと思っていたが、それは……きっと――。


「マスター」

「どうした? リオン」

「あれを見てほしい」


 リオンが指差す方向。

 そこには、骨の塊が小山として積まれていた。


「なんだ? あれは……」

「スケルトンの類であるな。だが――、この人間達とどういう関わり合いなのかは分からぬ」

「ふむ……」

「そのスケルトンの残骸は、俺達が母親を助けに行っている間に襲ってきたということか?」

「うむ。おそらくだが……」

「つまり、ゴロツキを助けにきたか……もしくは――」

「口封じにきたと言ったところかの」

「だが、何のためだ? そもそもスケルトンは魔物だよな?」

「そうなる。だが、死霊系の魔物は人間では扱うことはできないからの」


 リオンの言葉に、俺は思わず厄介ごとが増えたなと考える。

 つまり、俺達に手を出してきたのは、ただのゴロツキではなく、魔族の類ということ。

 そして、それには総督府も関わりがあるということだ。


「エミリア」

「ぐすん……はい……」

「セリアンを救った場所は、総督府の地下だったな?」

「はい……。それは地下深くという場所では?」

「いえ。兵士が守っていた牢獄の中にいました」

「なるほど……」


 これは、完全に総督府は黒ってことか。


「あの……」

「大丈夫か? 体に、何か違和感があれば治すが?」


 俺達の会話が途切れたところで、俺に頭を下げてくるセリアン。


「このたびは本当にありがとうございました」

「気にすることはない。宿泊する宿を決めて宿泊しようとしたら、俺達に手を出してきたから倒しただけのことだ。別に大したことではない」

「――でも、よかったのですか?」

「何がだ?」

「私が総督府の地下で捕まっていたのは、そちらの女性にお伺いしました。――でも総督府はリーン王国の王家が連なる王家の血筋の方が、この都市を治めていますので、お立場が……」




 


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