第263話 獣人国の冒険者ギルド’(3)

「それにしかないだろう?」


 あの王女殿下に借りを作るのだけはしたくはない。

 それにしても、ゲームの時みたくモンスターからアイテムやお金が落ちる仕様なら、王族や貴族相手に気を使う必要もなかったというものを。

 まぁ、クエストでは王族とか貴族から依頼を受けて盗伐報酬としてアイテムを貰っていたから、まったく関係なしでゲームを進行出来ていたのかと言うと微妙なところであるが……。


「そんなことを承諾するような貴族がいるとは到底思えないが?」

「まぁ、そのへんはな……。とりあえず城塞都市デリアの冒険者ギルドとのコンタクトはとれるか?」

「……まぁ、やってみるが……」


 渋々と言った様子で立ち上がるワーフランド王国の冒険者ギルド長。


「ついてこい」


 その言葉に、俺もギルド長のあとをついていく。

 ギルド長の部屋を出て通路をしばらく歩くと、階下へと延びる下へと下る階段があり、そこをギルド長が降りて行ったので、俺も後をついていく。

 段数としては100段程度だと思うが階段を下りきると、視界がいきなり開ける。

 階段を下りた先には、大空洞が広がっており、高さが10メートルほど。

 中心から円状に床が広がっていて、半径は20メートル近くはあるだろう。


「へえ、こんなところがあるんだな」


 床は、白の大理石が敷き詰められてはいるが、綺麗に磨かれているという感じではなく、切り出したままの大理石を、そのまま敷き詰めていると言った感じで、歩きにくくはないが所々、凸凹している。

 壁には、青い材質が使われている。

 遠目からは、レンガにペンキを塗ったような質感を受けるが、そうではないのは、時々、光る文字から見て分かるが――、


「これは……」


 思わず壁に書かれている文字が定期的に光ることで――、その文字が、どう言った文字なのかわかった上で、声が漏れた。


「驚いているところ悪いが、アレだ」


 冒険者ギルドマスターのラグドリアンが指さした先――、部屋の中心には祭壇のようなモノが設けられていて、それは断頭台? と、一瞬、首を傾げるモノであったが、そこに白い直径50センチほどの球体がクッションの上に置かれていた。


「あれで通信が出来るのか?」

「うむ。とりあえず、ついてこい」


 祭壇となっている場所へと近づくと、そのたびにドーム状の部屋の壁が煌めく。

 そして浮かび上がっている文字を見て、俺は視線を向ける。

 その文字は、この世界に転移してから見たことがないモノであり、俺が暮らしていた世界では、ごく一般的と言えば語弊があるが、何かしらのニュースなどで目にしたことが多いもの。


 ――プログラム言語


 それが、大空洞内の壁に定期的に映り込んでいた。


「あれは?」


 俺は、冒険者ギルドマスターの後ろを歩いて付いていきながら、ギルドマスターに問い質すが――、


「あれは神の言葉と言われておる」

「神の言葉?」

「ああ。各支店、各国の王族が通信の際に使う玉は、ここの場所――、神々が降り立った場所で力を回復させているのだ」

「そうなのか……」


 そんな設定、始めて聞いたぞ?

 

「うむ」

「だが、普通は神々が降り立った場所って、神聖な場所なんだろう? だったら、神殿が管理するか国が管理しているようなモノじゃないのか?」


 俺の全うとも言える意見に、冒険者ギルドマスターが何を馬鹿なことを言っている? と、言った表情を向けてくる。

 何か変なことを言ったか? と、思考するが心当たりがまるでない。


「遥か神話の時代――、国の在り方すら曖昧だった時代、一人の神が我々の先祖に言ったのだ。一人の権力者が独占することは好ましくない。それは、争いの種になると。多くの者が、利用するように――と神々は言葉を残したのだ。だからこそ、国が出資してはいるが、多くの民が関わっている場所に存在しているのだ」

「そんな裏設定あったっけ?」

「裏設定?」

「――いや、なんでもない」


 それにしても、どうもやっつけ感が強いというか……。

 

「神ね……」

「何じゃ? 人間族のくせに神を信じておらんのか?」

「そうじゃないんだがな……」


 答えながらも心の中では、神=運営と結び付けていたので俺としては心情複雑である。

 そもそもあまり考えないようにしてきたが……、プログラム言語を見て思ったことがある。

 どうして、俺を虐めていた連中が高校生の精神年齢で召喚されたというのに、俺は社会人年齢として若がってまで召喚されたか? ということだ。

 その部分が、どうしても説明がつかない。


「はじめるぞ?」

「ああ。頼む」


 ラグドリアンが、祭壇の上に置かれている玉に手を置くと口を開き何も設定もせずに「ワーフランド王国、冒険者ギルドマスターのラグドリアンだ。こちらの声は聞こえるか?」と話し始めた。


 しばらく無言の状態、何の反応も玉は反応を示さないが5分ほど経過したところで――、「こちら城塞都市デリアの冒険者ギルドマスター、ラムドだ」という声が帰ってきた。


「カズマ、通信が繋がったぞ?」


 俺を振り返ってくるラグドリアン。


「カズマ? そこにカズマ殿がいるのか?」

「カズマ、場所を代わってくれ」

「ああ。分かった」


 ラグドリアンと場所を代わると、玉の表面にはラムドの顔が映し出されていた。


「久しぶりだな。ラムド」

「無事だったか……。王都リンガイアのあと、ほとんど目撃情報が無かったから心配していたぞ?」


 そうラムドの方から話しを切り出してきた。




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