第233話 エウレカとの交渉(1)

 ダークエルフのリーダーであるカレンに案内されて到着したのは、洞窟内の石壁を掘り抜いて作られた住居が存在する場所。

 システムのMAPを確認するが、集落の人数は241人となっている。

 思ったよりも少ないというか……、


「カズマ殿、こちらが族長エウレカの住まいになります。いま、部下がカズマ殿のことを伝えてに行っておりますので、少しお待ちください」

「悪いな」

「いえ。大事な太客ではなく――、大事な方ですので……」


 一瞬、不穏な声が聞こえたが気のせいではないだろう。

 しばらくすると灰色の髪の女が石造りの家から出てくる。

 見た目は20代後半と言ったところだが、ダークエルフにはスタイルの良い男女が多いと設定で存在していた通り、体型にメリハリのある褐色美人の女性だ。

 そして――、こんな感想が脳裏で言えてしまうほど、布地の少ないビキニを着ている。

 まぁ、アルドガルド・オンラインでは、普通の服装なのだから仕方ないと思うが……。


「その方らが、神聖なるエルフの森を破壊して回った小竜を操っていた不届きものであるか?」


 挨拶もなしに、こちらに一方的に要件だけを伝えてくるダークエルフの族長エウレカ。

 別に、自己紹介も俺には必要ないし、彼女のことはゲームの設定のままであるのなら、俺は良く知っている。

 効率を重視し、暗殺者ダークエルフ族の部族長でありながら清廉潔白で高潔な女性。

 強さは、NPCの中でも10本の指に入るほどの強さを誇り、防御力を無視した一撃必殺のチートクラスのスキルを有している化け物だ。

 正直、正面からは戦いたくはない相手とも言える。


「カズマだ。Sランク冒険者をしている。俺の部下が迷惑をかけた。その詫びと謝罪にきた」

「ほう。つまり、全面的に自分に非があると認める訳か?」

「ああ」

「ダークエルフ相手に、自分が悪いと――、そう認めると?」

「そうなる。今回のエルフの森の件については、こちらに全面的に非がある。だから、直接、ダークエルフの族長である『灰色の女王』に会いにきた」

「……私のことを知っているのか?」

「ああ、有名だからな」


 とくにゲームの中では――、エピソード5が実装された時にはユーザーも多く、エウレカが出すクエストは有用なスキルとアイテムがあったから、数百時間はクエストを回したものだ。


「そうか……。暗殺者である私が、人気か……」

「それで、エウレカさん」

「エウレカでよい。――で、謝罪に来たということか?」

「もちろんだ。それで金品で謝罪できるのなら、それで何とか解決したいと思っている」

「なるほど……。狩人の報告通りか……、カズマとやら、少し二人きりで話をしたいのだが?」


 俺はエミリア達を見たあと、彼女たちは頷く。


「分かった」

「それでは、こちらへ来てくれ」


 エウレカに案内されたのは、彼女の家の中。

 家の中には、中央にペルシャ絨毯のようなモノが敷かれており、そこに座るようにと促され俺は胡坐をかく。


「さて――、カズマ。まずは、エルフの森を破壊した際の慰謝料であるが……と、思ったが、まずは自己紹介からか。私の名前は、エウレカ・ボールドと言う」



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