第109話 デリア総督府消滅(9)

「問題の発端は、銀の宿泊亭で宿泊をしようとした時に、町のゴロツキ共に囲まれた所から始まったな」

「ゴロツキ?」

「ああ」


 俺は頷く。


「何でもアイツらは総督府が行おうとしている区画整理とやらの為に、立ち退きを強要して総督府へ場所を高く売ろうとしていると言っていた」

「区画整理か……。そのような話は聞いた事が無いが……」

「ふむ。つまり――、ゴロツキが俺達を納得させる為に虚偽を言ったか、それとも――」

「何らかの理由を作り場所を確保したかった? そういうことか?」

「まぁ、そうなるな」

「だが、君の言っていることは総督府が関わっているという証拠には――」

「いや。エミリア、ミエルとセリアンを連れて来てくれ」

「はい」


 エミリアは、ずっと俺の後ろで控えていたが、一言も発してはいなかった。

 商談は俺に任せるという感じになっているから当然だとも言えるが、獣人に対する扱いが酷い人間が済む町では、口を出すことで、余計な反感を買うと思っているのかも知れない。

 しばらく待ったところで扉が開く。

 そこにはミエルと、ミエルの母親であるセリアンが居り、部屋へと入ってくると、ラムドの勧めで、二人ともソファーへと座る。


「――さて、ラムド。そちらの子供がミエルで――」

「ああ、知っている。そちらの女性がセリアンだろう? 冒険者ギルドでは、町中で行方不明になった人間に関しては、一定期間、捜索をする事になっているからな」

「それなら話は早い。彼女が――、セリアンは総督府の牢屋の中に捕まっていた」

「――何?」

「ゴロツキが、セリアンを誘拐し拉致監禁していた事を話したから、少し話をして、どこに拉致しているのかを確認し助けに行った場所が総督府だった」

「……つまりカズマ殿は、総督府に攻撃をしかけたと?」

「まぁ、そうなるな」


 俺の言葉にラムドが額に手を当てながら溜息をつく。


「それで、カズマさんはセリアンさんを奪還したという事ですか?」

「まぁ、そうなるな」


 ラムドの代わりに、俺に確認をしてくるソフィア。


「つまり、現状ではカズマさんは総督府を敵に回していると?」

「間違いなく敵に回しているな。――で、セリアンを救出したあと宿に戻れば、スケルトンがいた」


 俺の言葉にハッ! として顔をあげるラムド。


「――ということは……」

「タイミングが良すぎるだろう? しかも兵士や衛兵ではなくスケルトンだぞ? 不死者を、すぐに用意できるなんて人間が出来る訳がない」

「……つまり総督府は……」

「このデリアで何かをしようと企んでいる可能性が非常に高いな。むしろ何の関わりも無いと思う方がおかしい」




 

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