第10話 港町ケインに向けて出港!

「そういえば、カズマさん」

「――ん? どうした?」


 宿を引き払った俺とエミリアは港町アリアの港近くの食堂で朝食を摂りながら、今後の予定について話していた。


「さっき、冒険者ギルドに登録するって言っていましたけど」

「まあな」


 一応、俺はFランクの冒険者ギルドカードを持っているが、Sランク冒険者にでもなると冒険者ギルドも融通するようになるので、下手に使って俺が生きて居ることがバレたら動きにくくなる。

 つまり、新しく冒険者ギルドカードを作って活動した方が、勇者組にバレずに行動できるので必須なのだ。


「カズマさんって冒険者ギルドに登録していなかったんですね」

「そうだな。忙しくてな。それよりエミリアは、登録しているのか?」

「私は、山裾の村から出たことがありませんので……」

「なるほど。それならエミリアも冒険者ギルドに登録してみたらどうだ?」

「それは無理だと思います。獣人は魔王の手先という事になっていて冒険者ギルドカードは作れませんので」

「そうか」


 色々と弊害があるな……。

 多少、買取金額が減っても冒険者ギルドは動物から取れる皮などは購入はしてくれるが、やはり減額されるのは面白くない。

 そう言う事も含めて冒険者になるのは必須事項なのだが、獣人はソレもできないと……。


「そういえばエミリア」

「はい?」

「エミリアは、これからどうするんだ? この島で暮らすのか?」

「――え? 私は、カズマさんに付いていきますよ?」

「無理しなくていいんだぞ? 長い旅になるかも知れないからな」

「それでも、また裏切られるのは嫌ですから」

「そっか」


 同じ思いを――、裏切られた経験がある互い同士なら信用できるってことか。


「分かった。これから一緒に旅をしよう」

「はい! こちらこそ、宜しくお願いします」


 俺とエミリアは、互いに握手をした。

 そのあとは、冒険者ギルドに行き、冒険者登録を行う。

 もちろん登録名は、『田中一馬』から『カズマ』に変更した。

 冒険者登録カードも新しくなったので、これで勇者たちが俺のことを知る術を妨害することが出来る。


 登録が終わった後は、昨日の夕方までに狩った猪の皮を売りさばき金貨や銀貨に変えておく。

 そして、港にエミリアと向かい運賃を払いガレー船に乗り込んだ。


「なんだか変な匂いですね」

「潮風だ。あまり髪の毛を弄っていると綺麗な髪が痛むからな」


 船は、出港し――、ローレンシア大陸の港町ケインへの航路を進めた。




                                                     

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