第9話 アリアの港町(4)

 購入したポーションや、薬草などは、俺のアイテムボックスへと放り込んでおく。


「それにしても便利ですね。手荷物が減らせるだけで、すばらしいですよね」


 エミリアが感心したように街の外へ出る道を歩きながら話しかけてくる。

 

「そうだよな」


 アルドガルド・オンラインでは、基本的にアイテムボックスのスキルを持っているNPCは極少数で、もっていても10キロも入ればいっぱいになってしまう。

 だが、俺のアイテムボックスの収容数は、限界まで入れたことは無いが、体長20メートルのドラゴンを丸ごと入れた事があるので、相当な量のアイテムが入る。

 まぁ、俺を殺そうとした連中が手に入れたアイテム袋は、ドラゴン1匹は普通に入るらしい。

 つまり3人で3匹分。

 俺の3倍のアイテム量を持てるようになったので、俺を用済みだと思ったのかも知れない。


「まったく、俺はアイテムボックス以下の存在かよ」


 改めて考えると怒りが沸き上がってくる。


「カズマさん?」

「いや、何でもない。それより付き合ってもらって悪いな」

「――いえ。それより、歌う森に戻ってきて何をするんですか?」

「ちょっとな……」


 曖昧に答え――、歌う森の中を散策する。

 しばらく歩いたところで、俺の腕を掴んでくるエミリア。


「近くにいます」

「どっちだ?」


 声のトーンを落として二人で会話をしながら、彼女が指差す方向へと向かう。

 すると、1メートルほどの猪と遭遇する。


「――さて……」


 俺は足元に転がっている石を手に持ち――、投擲する。

 そして、猪が近寄ってきたところを鉄の剣で斬り倒そうと思ったが、小石は空気を切り裂き――凄まじい速さで猪の眉間にぶつかる。

 投げた小石は粉々に砕け散り周辺に四散し――、そのまま猪は倒れて動かなくなった。


「カズマさん、すごいです!」

「いや、すごいというか……」


 ステータスを強化したせいで、石を投げた時の威力が跳ねあがったらしい。

 しかも猪を瞬殺できるまでに。

 そのあとは、俺がいっぱしに戦えるようになるまで――、命を奪うことに後悔しつつも剣を振り下ろせるまで猪相手に戦い続けた。


 日が暮れる夕方になるまで……。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る