第144話 砂上の戦闘(3)

 城塞都市デリアを出立して、既に10日が経過していた。

 地図上によれば、あと数日で王都に到着する予定であるが……。


「ここは、どこなんだろうな」


 幌馬車は、リオンが引いているので恐ろしい速さで直進し砂漠の中を走っているが、その砂漠に俺は何とも言えない溜息をつく。

 地図では、城塞都市デリアからリーン王国の王都までは草原が続く緑豊かな場所と記されていたが、現在の俺達一向は砂漠の中を走っている。

 つまり、地図とは違う場所を移動している事になるのだ。


「えっと、地図では大草原って書かれていますけど……」


 エミリアも地図を見ながら困惑した様子。

 二人して、幌馬車の中で地平線の彼方まで続く砂漠の光景に溜息をつくことしかできない。

 ちなみに気候も砂漠と言うこともあり暑いのだが、その辺は風と水の魔法を器用に使い涼を取っている。

 おかげで、称号が一つ増えていた。


「アイスマンか……」

「どうかしましたか?」

「――いや、何でもない。ちょっと、この砂漠は何なのか? と、思ってな」


 エミリアの言葉に答えながらも俺は、視界内のカーソルを動かしMAPを起動する。

 MAPには、リーン王国の名前が表記されていて、王都の近郊まで砂漠が続いている事が書かれている。

 そして――、向かう先には小さな街が存在している事も。


「エイラハブの街か」

「――え?」

「エミリアは知っているのか?」

「……はい」


 一瞬、顔が強張ったかと思うと、すぐに笑顔を見せ答えてくるが――、それが作り笑いだという事くらいは、俺にだって分かる。

 伊達に男女の間柄ではないのだから。


「何かあったのなら、言ってくれていいからな」

「分かりました」


 神妙そうに頷くエミリアに、俺は何か隠しているという事は分かったが深く詮索する事は出来ずにいた。

 人には秘密にしておきたい事が必ずあるからだ。

 俺だって異世界から召喚された日本人だという事を誰にも言っていない。

 そして、俺の力の秘密のことも。


 俺は、リオンに街が見えたら知らせるようにと命令し、幌馬車の中へ戻ると自分のステータスのチェックをする。

 色々あって最近は、確認していなかったからだが、時間がある今ならできるからな。


 視界内のカーソルを選びステータスの項目を選択。

 すると視界内にコンソール画面が開く。




ステータス


【レベル】250

【物理攻撃力】999

【物理防御力】999

【移動回避力】999

【魔法攻撃力】999+999

【魔法防御力】999+999


【残りポイント】4995




魔法


 魔法欄一覧

『ヒールLV10』

『氷魔法LV10』

『雷魔法LV10』

『水魔法LV10』

『風魔法LV10』

『土魔法LV10』

『火魔法LV10』

『融合魔法LV1』


スキル


『片手剣LV10』

『投擲LV10』

『イーグルアイLV10』

『状態異常無効化LV10』

『マルチロックLV10』

『自動追尾LV10』

『肉体防御LV10』

『騎乗LV10』

『クリエイターLV10』

『錬金術師LV10』

『付与術師LV10』

『連続魔法』

『合成魔法』


称号


【称号】

▲アイスマン

▲裏切られし者

▲童貞卒業

▲復讐者

▲酒飲みの王

▲浪費家

▲魔王軍の天敵

▲英雄

▲勇者

▲魔神




 久しぶりにステータスの項目を開いたが、魔法やスキルや称号も幾つか増えている事に気がつく。

 そして、何よりも極めつけは『勇者』という称号が付いている事だ。

 日本から召喚された時には、存在しなかった勇者という称号。

 それが、魔王軍との戦いで付与されるようになるというのは皮肉と言ってもいい。


「これは、面倒な事になりそうだな」


 思わず俺は、心の中で溜息をついた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る