本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
第1話 チュートリアルは完了しました。
「一馬、お前、今日でクビな!」
「――え?」
ダンジョンから戻り換金して、冒険者ギルドから出て、しばらく進んだ裏路地で、アイテムを整理したいからと言われて、アイテムボックス内のアイテムを全部出したところで、唐突に俺は一方的にパーティを追放された。
それを言って来たのは、金子(かねこ)隆(たかし)。
俺は、何が何だから分からない内に無理矢理、首を掴まれる。
「ようやくお前とおさらばできるぜ! まったくアイテムボックスさえ貰えるSランク冒険者になれば、お前みたいなアイテムボックスしかスキルを持ってないゴミはいらねーんだよ! この寄生虫が!」
突然のことに、俺は何も出来ずに頭の中は真っ白だった。
金子に俺は無防備に殴られる。
何度も! 何度も! 何度も!
どれだけ殴られたか分からない。
もう体中がボロボロで逃げることすら許されない。
「皆月さん……」
俺は同じパーティメンバーの名前を呼ぶ。
だけど、そんな俺の願いは簡単に踏みにじられた。
右腕が、同じパーティメンバーの皆月(みなつき)茜(あかね)さんの炎の初級魔法(ファイアーボール)で焼かれたから。
脳裏を突き抜けるような激痛。
それは痛みを通り越して拷問だった。
――叫ぶ。
だけど、裏路地だった事もあり誰も通らない。
なんで? と、いう感情も相まって俺の思考は混乱し、さらに、もう片腕も焼かれる。
顔は、金子に殴られ続け意識は朦朧としてくる。
「ほんと! キモイよね。自分が好意を持たれているとか勘違いしてさ! あー、同じ空気を吸っているってだけで気持ち悪い」
声だけが――、皆川さんの声が聞こえてくる。
薄れゆく意識の中で、自分の体が何かに刺されたところで、もう一人のパーティメンバーである高山(たかやま)浩二(こうじ)の笑い声が聞こえてくる。
「簡単に騙されやがって! てめーみたいな、社会の底辺のゴミ屑を仲間だと思うわけがねーだろ!」
何度も何度も何度も、自分の体が刺される。
痛みは無い。
ただ――、信じた仲間に裏切られたのは、とても痛かった。
そして……俺の意識は暗闇の中へと落ちていった。
それと同時に脳内に声が反響する。
――チュートリアルが完了しました。
そこで俺は何が起きたのかと必死に意識を繋ぎ止めながら目を開ける。
どうやら倒れているのは、裏路地だった。
仲間だった連中に放置されたらしい。
もう体は殆ど動かせない。
全てのアイテムは仲間に奪われた。
お金が入った袋も奪われ、手元には何も残ってない。
信じていたのに、俺は裏切られたという事実は変わらないらしい。
「もう無理だ……」
――そこで俺の意識は途切れた。
――夢を見た。
そこは異世界ガルドランド。
剣と魔法の世界で、エルフやドワーフなどもいるファンタジーな世界。
そんな世界の森の中に、ある日、俺、田中(たなか)一馬(かずま)は目を覚ましたら召喚されていた。
――しかも、40歳という年齢で初老の域に入っていた俺の体は17歳まで若返っていた。
当然、突然のことに驚いた。
だが、大国アルドノアの王様の命令で俺を迎えに来た兵士に、俺は召喚された勇者だからと城に案内された。
――到着した謁見の間。
国王アルザスの前には、俺以外に3人の召喚された日本人が居た。
高校時代に俺を虐めた主犯格の男2人。
そして常に俺をゴミでも見るような目で見下していた女子生徒。
俺は警戒しつつ、謁見の間で片膝をつき国王の話を聞く。
国王アルザスは言った。
本来、勇者は3人のはず。
だが、4人、召喚されてしまったと――。
全員が勇者という事で、魔王を討伐する為に4人でパーティを組んだ。
だが、すぐに俺は役立たずだという事が判明してしまう。
――理由は簡単。
ゲームのようにステータスが見られたから。
他人には、自分のステータスを見られることはないが、自分自身ではステータスを見ることは出来る。
だから、称号の部分を見れば、自分が勇者かどうかはすぐに判別できた。
そして――、俺は神に近い魔王を倒す必須の称号である『勇者』の称号を持っていなかった。
だけど、高校時代に俺を虐めていた奴らは別人だと思うほどに、やさしく良い奴らだった。
「同じ高校の仲間だろ! ずっと友だろ!」
そう言って親指を立ててアピールしてくる金子隆。
「そうよ! 一馬は、同じ日本から来た友達なんだから、一緒にがんばりましょう!」
皆月(みなつき)茜(あかね)さんは、俺を励ましてくれた。
「まぁ、一馬。今日からは一緒に頑張ろうぜ!」
そう言い、俺に笑いながら話しかけてくる高校生時代に俺をサンドバック扱いしていた高山(たかやま)浩二(こうじ)。
俺は、あまりにも彼らの態度が違うことに驚いたが、俺と同じように若返ったのかと思った。
だが話を聞く限り全員が高校で授業を受けていた時に異世界に召喚された事が、すぐに判明する。
俺は自分が若返ったことは隠した。
余計な詮索をされて、せっかく気立ての良い奴らを不安にさせる必要はないと思って。
――だが……、それが……、判断の誤りだった。
仲間だと思って一緒に行動していた結果が……。
「大丈夫ですか? 生きていますか?」
死ぬ間際に俺は、ふいに目が覚めた。
そして、俺を心配そうに覗き込んでいる獣人の美少女に目を奪われた。
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