第195話 復讐の時間だ! 覚悟はいいな!(2)

「そ、そんな……。あ、あんなのは……ただの……」

「遊びだとでも言いたいのか? ふざけるなよ……」


 俺はアイテムボックスからダガーを取り出し、空中で一回転させたあと雷の魔法を纏わせてから高山の背中に突き刺す。

 さらにダガーの柄を力一杯踏みしめた。

 それと同時に、耳障りな声が聞こえてくる。

 俺は、その痛みと恐怖を綯交ぜにした高山の声を聴きながら、もう一本のダガーを出現させ、高山の指を斬り落とす。


 血を吐きながら、涙を零しながら、「だずげ……で……」と、濁った声で、命を助けて欲しいと、そう――のたまう声に俺は――。


「助ける訳がないだろうがああああああ!」


 高山の首を掴み空中へと投げる。


「火魔法LV9 火炎旋風ファイアーストーム!」


 俺が発動させた最高位に近い数千度の炎を纏う大規模な台風は、高山の身体を切り刻み焼き尽くしていく。

 絶叫を発しているだろうが――、140ノットを遥かに超えるカテゴリー5と呼ばれる巨大な竜巻の暴風が、その声をかき消す。

 さらに、俺の魔法は無人となった町を粉々に破壊していく。

 巻き上げられた建物の残骸は、上昇気流に呑み込まれ炎を纏い超高速の物質――、弾丸となり、竜巻に呑み込まれた高山の身体を打ちのめしていく。


 そして――、火炎旋風は城壁を破壊。

 地竜が相手をしていたモンスターにも、その破壊の触手を伸ばしていく。


「主」


 火炎旋風がモンスターを喰らっていくと共に、人間へと姿を変えた地竜が上空から降りてくる。


「人間の形態に戻ったのか?」

「はっ。それよりも、広範囲攻撃魔法を使う場合には一言言ってくだされ。巻き込まれるところでした」

「すまなかったな」


 俺は地竜に返答しながら、全てのモンスターを呑み込んだ火炎旋風が消えるのを確認すると、竜巻の中心――、遥か上空から落ちてくる物体に近づく。


「あ……が……」


 言葉にならない声をあける高山。

 すでに四肢は存在しておらず、尻尾も引き千切られたかのようにズタズタになり、さらには片目には、砕け尖った石が突き刺さっていた。

 満身創痍というのは、こう言う事を言うのだろう。


「――さて、ずいぶんと軽くなったな?」


 俺は首を掴み持ち上げる。

 そして腹を殴る。

 緑色の血液が辺りに飛び散る。

 

「ゴフッ……も、もう……」

「何度も言うが、俺が止める訳がないだろう? 自分が、他人にしてきた事を、やり返された時に、止めてほしいなんて――。さすがに、そんな理屈は通らないだろう?」


 俺は、笑みを浮かべる。

 そして――、何度も何度も高山の腹を殴り続ける。


 そう――、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。


 俺の様子を横で見ていた地竜でさえも俺の凶行に顔を背けるほどに。

 だが、俺は止まらない。

 この程度の事で俺の憎しみが消化出来る訳がないからだ。


「主様」


 その声に、俺はハッとし動きを止める。

 そして――、気が付く。

 俺が掴んでいた高山の内臓どころか腹部は、完全に吹き飛んでいたことを。

 そして、日が沈みかけていたことを。


「そうか……」


 怒りと憎しみのあまり、俺は記憶が飛んでいたらしい。


「はぁ、それにしても内臓が殆どないというのにしぶといものだな」

「この世界に召喚された時に付加された加護かも知れません」

「そんなものがあるのか?」

「はい。勇者には、そのような加護があると」

「なるほど……」


 どうりで皆月茜が肉塊となっても生きていたわけだ。

 ――なら、コイツも肉塊行きだな。

 勇者を全員肉塊として飾るのも、なかなかオツなモノかも知れない、。







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