第88話 オークの討伐戦(2)

 洞窟の入り口は、高さ5メートル、幅は3メートルはありそうな大きなモノであったが、その洞窟の入り口には、根本ごと抜きとった大木が詰められていた。

 

「リオンちゃん、すごいわね」

「まぁ、この程度は、妾としては当たり前のこと」


 背をのけ反らせながら自慢げな表情のリオン。

 その様子を横目で見ながら、俺は風魔法で一部の大木を切り刻みオークが通れる道を作ってから、火の魔法で大木などに火をつける。


「カズマ。何をしているの?」


 エミリアが、俺が洞窟に入ってオークを討伐しないことを不思議がり聞いてくる。


「まずはオーク達を燻りだす。出てきたオークは、エミリアとリオン、お前で処理しておけ」

「了解した。マスター。だが――、オークも繁殖という事は生きる行為で動いているのだが、それは良いのか?」

「何が言いたい?」

「生存本能で生きている生物を殺すのはマスターの主義に反するのでは? と、思ったのだが?」

「生存本能でも相手に手を出す以上、報復が起きることもあるだろう? 今回は、それと同じだ」

「ふむ……。了解した」


 俺とリオンが話している間にも俺達が入る洞窟の入り口に無数の何かが近づいてくるのが感じ取れた。

 金属が擦れる音からも、おそらくは――。


「マスター。オークが上ってきたぞ」

「よし! 戦闘準備! 俺は、中に入って攫われた人を救ってくる」

「はい!」

「了解だ」


 俺は、合図を出すと共に体の周囲に風の魔法を使い気流の膜を作り煙から身を守りつつ、オークが洞窟から出てきたタイミングで洞窟内へと入る。

 洞窟内は煙で充満していて目視では状況を確認できない。

 だが――、スキル『イーグルアイLV10 』では話は別。

 俯瞰的に物事を見る事が出来るので、俺は洞窟内を駆け降りていく。


「ギギッ!」

「ブヒッ!」


 途中で、避難しようとしているオークの頭をブロードソードで斬り飛ばし、さらに下へと降りる。

 そして、オークと擦れ違わなくなったところで、スキル『クリエイターLV10』を使い、外へと繋がる通路を塞ぎ――アイテムボックスで煙を回収しながら、洞窟の最深部へと向かう。


「ここが最深部か……」


 俺は、全ての煙をアイテムボックスで回収したあと、煙を多少は吸いこんではいるものの、全ての女性や女の子が生存している事を確認しヒールを掛けていく。


「あの……貴方は……」

「俺は冒険者カズマだ。君達のことを、ウッドパルプの村長である村長クズキリからの依頼により助けにきた。全員、無事か?」


 最後に、魔法で治療した女性と話しながら、語り掛ける。


「はい。ありがとうございます。私、クズキリの娘のイーナと言います。助けに来て下さるのがもう少し遅かったら、乱暴されているところでした……」


 そう語ると、目から涙を零し嗚咽するイーナという女性。

 ふと周りを見ると喜びを分かち合うもの。

 助かった安心感から泣き出す女性と様々な反応だが、何とか全員を無事に助けることが出来たようだ。



 

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