第87話 オークの討伐戦(1)

「――なら、すぐに助けにいくぞ」

「よいのか? 人間を」

「良いも悪いもないだろう?」

「ふむ。まぁマスターがいいのなら問題ないが」


 少し含みのあるような問いかけに俺は首を傾げるが、時間がもったいない。

 

「ウッドパルプを襲ってきたということは近くにオークの集落があるってことだよな?」

「近くとは言わないが、遠くは無い」

「なら――、リオン。急ぐぞ」

「了解した。マスター」

「エミリアは、休憩していてくれ。疲れただろう?」

「私も行きます」


 気丈にエミリアは振る舞うが、多くの村人を運んだことで、疲れているのは一目で分かる。


「エミリア、村人を運んで疲れているだろう?」

「マスター。奥方様は、ここ数日の間、鍛錬を行ってきた。実践で身に着けた技術を使うのは良いと思うがの」

「だが――」

「私は大丈夫です」


 エミリアは、俺がスキルを使い強化し改良した長刀を手に立ち上がると、近寄ってくると俺を見上げてくる。


「もう、私は、足手纏いは嫌です」

「エミリア。だが……、疲れている時に戦っても本来の実力は発揮できないぞ?」

「マスター、案じることはない。オーク程度、我々の敵からな」

「……」


 何か、やけにエミリアの同行に積極的だな――コイツ……。

 

「わかった」


 俺はとりあえずヒールをエミリアにかけておく。

 表面的の疲労は回復するが、根本的な疲れは取れないが、無いよりはマシだろう。


「とりあえずいくぞ」

「了解した」

「はい」


 リオンを先頭に、俺とエミリアは森の中に足を踏み入れる。


「これって、リオンが居なくても道が一発で分かるな」

「そうですね」

「妾の存在価値を疑うような言い方は止してもらおうか」


 俺達は巨体のオークが、森の中に作った獣道を足早に追いかける。

 そして10分ほどで、オークの足跡が途絶えるが――、それは目の前の洞窟へと続いてたいたからだ。


「あれか……」

「うむ。とりあえず、行くとするか」


 俺は思わず、リオンのツインテールの髪を掴み引っ張る。

 ぐぇ! と、言う音と共にゴキッ! と、いう音も聞こえてくるが、とりあえずヒールしておく。


「マスター、何をする?」

「何をするもないだろ。相手には人質が居る状態なんだぞ? 真正面から、突っ込んでどうする?」

「なら、どうすればよいのだ?」

「簡単な話だ。まずは生乾きの葉や枝を用意しろ」

 


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