第21話 港町ケイン(10)

「昨日は夜遅くまで飲み過ぎたか……」


 肉体年齢的には現在、17才ではあるが、本当の実年齢は40歳。

 なので、普通に酒を飲んでいたが、まぁ、細かいことは気にしない。

 俺は、ベッドの上で起きたばかりで朦朧としている中、もう一度、寝ようとしたところで、腕が何かに触れた事に気がつく。

 何か、ムニョという柔らかい感触が……。


 すぐに隣のベッドを見る。

 そこにはエミリアは寝てない。

 そして、俺のとなりには、何故か裸のエミリアが寝ていた。

 もちろん、俺も裸だ。


「……やばい。何も思いだせん」


 昨日、冒険者の連中と酒を飲み、歌い、食って、途中の頃には完全にハイになっていた。

 そして、最後らへんは、「酒を! 樽を持ってこい!」と、言った気がする。

 そして樽が届いてからの記憶が、まったくない!


「やべえ……。何も思い出せない」


 一応、ログを確認するが、ログには「――スキル『状態異常無効化LV1▲』を習得しました」としか書かれていない。

 つまりスキルを、酒を飲んで習得したが、LV1のまま使っていたので、大した効果も得られずに現状に至ると。


「んっ……」


 そこでエミリアが起きた。

 そして、ボーッと俺を見てくる。


「おはようございます。カズマさん」

「――お、おはよう」


 たぶん、俺は引きつった顔で答えている。

 その自覚はある。


「え、エミリア」

「はい? なんでしょう?」


 まだ眠いのか声に張りがない。

 だが、逆に魅惑的な声色でもある。


「――き、昨日は……」

「昨日は、カズマさん、すごかったです……」

「そ、そうか……」

「はい。もう何回も――」


 全然、記憶にねえええええ。

 これってあれだよな? 


「カズマさん、どうしたんですか? 朝から――」

「――い、いや、何でもないから……」


 何と言うことだ。

 この俺が前後不覚になるまで飲み続けるばかりか肉体関係まで持ってしまうとは……。

 しかも相手は旅の同行者であり仲間だぞ?

 それに夜伽まで強要されて逃げてきた女性だ。

 

「何だか、顔が真っ青ですよ?」

「それは……」

「やっぱり後悔していますよね? 獣人族と……」

「そんなことないから!」


 やっぱり会話の流れ的に致しました的な感じがする。

 ただ、俺、ぜんぜん覚えてないんだよな。

 だが! 意識が無い状態で口説いて、それで肌を重ね合わせ、それを忘れていました!と聞くのは相手に対して間違いなく失礼だ。


 ――つまり、ここは……。


「エミリア」

「はい?」

「俺、責任取るから」

「え? あ、はい」


 とりあえず男として責任を取る姿勢を見せることが重要だろう。


 

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