第227話 王都からの脱出(6)

 城壁近くまで移動したところで、身体強化を行った上で跳躍し王都を守る城壁を超える。

 もちろん、周りには人が居ない事を確認した上で実行したが――。


「城壁の上にも人影は、まばらか」


 何時もなら、城壁の上には、それなりの兵士が配備されていたのだろう。

 だが、いまは復興中ということで手が足りていないのか、俺が城壁の上に上がってきたことに兵士達は、すぐには気が付いていない。

 俺は、すぐに城壁から飛び降りると同時に、着地する直前、『土魔法』で地面に干渉し穴を掘る。

 そして、すぐに『土魔法』で穴を埋めてから、視界内のMAP画面を開く。


「さて、とりあえず騒ぎは起きていないみたいだから、俺が城壁から飛び降りたところを目撃した兵士はいないみたいだな」


 身体強化を行った上で、しばらく耳を澄ませていたが、とくに目立った反応はないので問題ないだろう。

 MAP内のエミリア達がいる場所へ、土魔法で地面を掘りながら移動していく。


「もぐらな気分だな」


 一人、突っ込みを入れつつ唐突に巨大なハンマーが俺の行く手を阻む。

 そのハンマーは見憶えがあり――、


「マスターか、何故、土の中を移動しておるのじゃ?」

「リオン。お前、俺が来ているのは分かっていただろう?」

「――と、申されてもマスターの気配は土越しでは拡散されてしまっての。イドル! マスターが、近づいてきているのなら一言あって然るべきではなかったのかえ?」

「そのくらい、魔神様を慕っているのなら分かると思っての」

「なにー!」


 どうやら、イドルは俺が近づいてきている事については分かっていたようだな。

 そしてリオンには伝えなかったと。

 まぁ、二人とも司る属性が異なるからな。


「とりあえずだ。俺達が王都を出てきたのを王宮側に知られるのは都合が悪い。すぐに、この国を出るぞ」

「了解です」

「あ、カズマ? お帰りなさい」


 少し離れたところで馬車の中から顔を出したエミリアが話しかけてくる。


「ただいま、とくに問題はなかったか?」

「はい、とくには」

「そうか。リオン」

「はっ」

「イドルはリオンと交代で馬車を引くようにな」

「わかっております」


 エミリア達と合流後は、すぐに馬車で移動を開始する。

 向かう先は北方。

 つまり、エミリアの故郷である獣人の国ワーフランドであり、魔王軍の本拠地とも言える魔王領の近く。


「――さて、魔王が攻めて来ない事を祈るばかりだな」

「マスター。魔王なんて倒してしまってもいいのでは?」

「そんな必要はないだろ」


 そもそも、俺は売られた喧嘩を買っただけだからな。

 別に魔王には恨みも何もないし、俺が唯一、恨んでいたのは勇者組だったし。


「まぁ、エミリアの故郷についたらスローライフでも楽しむとするか」





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