第204話 王都リンガイア(3)第三者視点

 王都リンガイアの中心に聳え立つ王城の一室。


「つまり、腕利きの冒険者を此方に送ったと言う事で良いのか? ソフィア」

「はい。ギルドマスター」


 暗い室内。

 水晶球から、声が零れ落ちる。

 そして声は音として室内に反響する。


「ラウルフ。彼女は?」

「シルフィエット様。この者は、ソフィアと言い、私が筆頭宮廷魔術師を辞した後に身を寄せていた港町ケインの冒険者ギルドで私の代理をさせています」

「そうなのね」


 50代を過ぎた白髪が混じったグレーの髪色を持つ初老の男性が、話しかけたのは艶やかな緑色の髪の色を持ち絶世とも言える美貌を持つ女性――、リーン王国の女王シルフィエット・ド・リーンであった。


「はい。それと、腕利きの冒険者――、カズマですが、すでに魔王四天王の一角アンセムを倒しています」


 ソフィアの言葉に、室内がざわつく。

 室内には、女王をはじめ国を支える重鎮達がいたからだ。

 誰もが疲れた顔色をしていたが、ソフィアからの話を聞くと、『まさか?』と、言った驚きの表情を見せていた。


「アンセムを倒したというのは本当なのか?」

「はい。それにアンセムだけではありません。魔王軍四天王のアデルデン、さらには皆月茜すら討伐しています」

「落ち着きなさい!」


 先ほどまでのざわつくとは比較にならないほどのどよめきが室内を満たしたところで、冷静に臣下に声をかける女王。


「――して、どのくらいで到着するのか?」

「シルフィエット様。あと数日のうちには到着すると思われます」

「そうか……。それで、そのカズマと言う人物は勇者ではないのか?」

「本人は勇者ではないと言っていました」

「ふむ……。ラウルフ、勇者でも無い者が魔王四天王や、女神の祝福を受けた魔王四天王を倒すことは可能なのか?」

「わかりませぬ。前代未聞のことですので」

「ふむ……。だが、これで少しは希望が持てたのかも知れませんね」


 女王は自分自身に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。

 そんな弱音とも言える女王の言葉を遮るかのように口を開くラウルフ。


「そういえば、ソフィア」

「ギルドマスター、何でしょうか?」

「魔王軍を倒したという冒険者だが……魔王軍がいるかも知れない王都への依頼は難しかったのではないのか?」

「借金をして頂き、無理矢理王都へ行って頂くようにしました」

「はぁ……。後々、問題になりかねない方法を取るのは良い案とは言えぬぞ?」

「ギルドマスター、それは重々承知しています。ですが! いまは、少しでも可能性のある人間を……」

「だが、死んだらどうする? 優秀な人材を無暗に特攻させることこそ、人材の損失にあたり魔王軍との戦いにおいて致命的な問題になる可能性があるのだぞ?」

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